三重大学、藤田尚己先生の「鉄代謝は肝臓病治療の要」という講演を拝聴しました。主にC型肝炎の鉄過剰と瀉血のお話でしたが、鉄代謝に関わるホルモンであるhepcidinの意義がよくわかりました。
hepcidinは消化管からの鉄の吸収を抑える役目があり(下図)、鉄過剰になると血中濃度が上がるのですが、C型肝炎ではferritin値に比してhepcidinの濃度が十分上昇していないことが分かりました。さらに、hepcidinの産生にはSmad4という細胞内シグナル伝達物質が必要ですが、その遺伝子レベルがC型肝炎患者の肝臓では低下していること、さらに、Smad4の働きを抑制するSmad6,7の遺伝子発現は逆に亢進していること、IFN治療でHCVが排除されるとhepcidinの血中濃度(正確にはhepcidin/ferritin比)が正常に戻ることが分かりました。
以上の成績から、HCV自体が細胞内で遺伝子レベルでhepcidin産生に関わっており、そのことが鉄過剰に繋がっている可能性が説明されました。
実地臨床では、瀉血を開始するferritin値の絶対値はなく、50-60ng/mlであっても、瀉血で10ng/ml以下にするとALTが改善する症例もあることが紹介されていました。
図はAdvances in Hematology vol.2010より引用
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