これらの心血管疾患に関係しているのが動脈硬化で、その発症・進展にLDLコレステロールが大きく関わっていると考えられ、現在ではスタチンを中心とする脂質低下療法が広く行われるようになり、それにより動脈硬化性疾患の発症リスクが減少することが数々の大規模スタディが証明しています。
しかしながら、近年登場した強力なスチタンでLDLコレステロール値を下げても、動脈硬化性疾患を確実に抑止できていません。
例えば、海外でアトルバスタチン80mg/日という高用量(国内では重症の家族性高コレステロール血症に対する最大用量が40mg/日)を用いて行われたスタディでは、同薬を10mg/日 用いた場合に比べて心血管イベント発生が6年間で10.7%が8.7%に減少して、相対リスクが22%減少していますが、大幅に抑止することに成功していません(N Engl J Med 352: 1425-1435, 2005)
この成績は動脈硬化性疾患を確実に抑えるには、LDLコレステロール値の管理だけでは不十分で、なんらかの「残された危険因子」があることを示しています。
その答えを探るために2008年に「R3i(Residual Risk Reduction Initiative)」という世界的な取り組みがスタートしました。これは世界40ヵ国で指導的な立場にある心疾患や内分泌領域の専門家が参加し、心血管疾患と細小血管障害について国際的な調査を進めるプログラムです。
www.r3i.org
高LDLコレステロール血症以外の危険因子としては現在、高トリグリセライド血症(とくに食後高トリグリセライド血症)、低HDLコレステロール血症、small dense LDLなどが知られており、これらへのアプローチもR3iプログラムの研究課題になっています。
これからの研究成果に期待したいと思います。
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