B型肝炎再活性化による劇症肝炎の現状と対策(日消誌107: 1426-1433, 2010)
移植や抗癌剤治療、さらにはTNF-α抗体など免疫を強く抑制する治療でB型肝炎が再活性化され、劇症化する症例が報告されています。
本論文は、そのまとめで対策のガイドラインも掲載されています。
報告例では悪性リンパ腫の治療例が多く、特にリツキシマブの使用例が多いことが最近の特徴です。
それを踏まえての診療ガイドラインが作成されています。
2010年10月10日日曜日
2008年2月24日日曜日
循環障害による肝障害③
循環障害による肝障害の3回目は慢性うっ血肝です。
急性うっ血肝はこのシリーズの①で紹介したようなAST,ALT,LDHの著明高値が特徴ですが、慢性うっ血肝では胆道系の酵素が上昇する特徴があります。
文献的には心臓移植前後の肝機能を比較したものがあり、うっ血の改善とともにALP、γGTPが改善することが報告されています(Transpl Int. 2005; 18: 697-702)
おそらく中心静脈周囲の細胞が障害を受け、毛細胆管も一緒にやられるために胆汁うっ滞型肝障害を呈するものと思われます。
また、潜在的にうっ血肝が存在する症例で薬物性肝障害をおこすと高度な胆汁うっ滞を呈する症例がありますが、これも同様に中心静脈周囲の障害が強いためと思われます。
急性うっ血肝はこのシリーズの①で紹介したようなAST,ALT,LDHの著明高値が特徴ですが、慢性うっ血肝では胆道系の酵素が上昇する特徴があります。
文献的には心臓移植前後の肝機能を比較したものがあり、うっ血の改善とともにALP、γGTPが改善することが報告されています(Transpl Int. 2005; 18: 697-702)
おそらく中心静脈周囲の細胞が障害を受け、毛細胆管も一緒にやられるために胆汁うっ滞型肝障害を呈するものと思われます。
また、潜在的にうっ血肝が存在する症例で薬物性肝障害をおこすと高度な胆汁うっ滞を呈する症例がありますが、これも同様に中心静脈周囲の障害が強いためと思われます。
2008年2月10日日曜日
循環障害による肝障害②
循環障害による肝障害の2回目はHELLP症候群です。
28歳女性
妊娠35週目に尿蛋白陽性、血圧129/96と軽度の妊娠中毒症の所見を指摘された。同日の夜間に上腹部痛、嘔吐を認めたため、23時頃、救急外来を受診した。来院時、子宮収縮は軽度あったが、内診及び(婦人科)超音波所見にて異常を認めず、ブスコパンなどの投与にて疼痛は一旦軽減したため、帰宅した。帰宅後、再度疼痛増強したため翌朝、再度来院。心窩部に反跳痛を認めたため入院となる。
WBC 15300 (Seg80%、Lymphs6%、Monos7%), Hb 13.3, Plt 3.6万, CRP 0.8, Alb 3.2, ZTT 7.2, TTT 1.2, ChE 203, T-Bil 2.4、D-Bil 1.2, AST 485, ALT 411, LDH 3778, ALP 419, LAP 335, γGTP 19, Cr 1.1, BUN 15, AMY 90, CPK 255, TCH 223
腹部超音波検査にて胆嚢壁の肥厚があり、急性胆嚢炎+pre-DICと診断し、妊娠の継続は危険と考えられ、胆摘+帝王切開術を施行した。胆摘時の肝の所見は虚血と思われる地図状の色調変化が認められた。術後の経過は母子ともに順調で、上昇した肝酵素も速やかに低下した。肝の虚血所見、dataの動きからHELLP症候群と診断した。
HELLP症候群とは、妊娠後期または分娩時に生じる母体の生命の危険に伴う一連の症候を示す状態で3大徴候の英語の頭文字を取って名付けられている。
Hemolytic anemia(溶血性貧血)
Elevated Liver enzymes(肝逸脱酵素上昇)
Low Platelet count(血小板低下)
一般的な症状としては、頭痛(30%)、視力障害、不快感(90%)と、吐気や嘔吐(30%)と、上腹部の痛み(65%)等を呈する。妊娠高血圧症候群に伴うことが多いく、その後に子癇を発症する場合も多いとされる。こういった症状を呈してきた場合、緊急に血液検査を行って診断をつけることが重要である。
HELLP症候群の本態は不明な点が多いが、血管攣縮が重要であると考えられている。双胎の頻度が多いことより、子宮が大きくなり腹腔神経叢を圧迫することより反射的に腹腔動脈が攣縮する可能性が考えられる。このような反射をReily現象という。
さらにAT-Ⅲ低値の例が多いとされており、血管攣縮から血流障害を起こし、抗血栓性に働くAT-Ⅲが少ない状況では微小血栓が生じて、血小板減少、肝酵素上昇を引きおこすものと考えられる。フィブリン沈着や内皮障害をきたした微小血管を通過する赤血球は損傷され、溶血をおこし、病的赤血球の出現となる。治療としては、緊急に急遂分娩または帝王切開妊娠継続の終了させる必要がある。
本例でみられた上腹部痛、胆嚢壁肥厚は肝動脈領域の虚血によるものであったと考えられた。
28歳女性
妊娠35週目に尿蛋白陽性、血圧129/96と軽度の妊娠中毒症の所見を指摘された。同日の夜間に上腹部痛、嘔吐を認めたため、23時頃、救急外来を受診した。来院時、子宮収縮は軽度あったが、内診及び(婦人科)超音波所見にて異常を認めず、ブスコパンなどの投与にて疼痛は一旦軽減したため、帰宅した。帰宅後、再度疼痛増強したため翌朝、再度来院。心窩部に反跳痛を認めたため入院となる。
WBC 15300 (Seg80%、Lymphs6%、Monos7%), Hb 13.3, Plt 3.6万, CRP 0.8, Alb 3.2, ZTT 7.2, TTT 1.2, ChE 203, T-Bil 2.4、D-Bil 1.2, AST 485, ALT 411, LDH 3778, ALP 419, LAP 335, γGTP 19, Cr 1.1, BUN 15, AMY 90, CPK 255, TCH 223
腹部超音波検査にて胆嚢壁の肥厚があり、急性胆嚢炎+pre-DICと診断し、妊娠の継続は危険と考えられ、胆摘+帝王切開術を施行した。胆摘時の肝の所見は虚血と思われる地図状の色調変化が認められた。術後の経過は母子ともに順調で、上昇した肝酵素も速やかに低下した。肝の虚血所見、dataの動きからHELLP症候群と診断した。
HELLP症候群とは、妊娠後期または分娩時に生じる母体の生命の危険に伴う一連の症候を示す状態で3大徴候の英語の頭文字を取って名付けられている。
Hemolytic anemia(溶血性貧血)
Elevated Liver enzymes(肝逸脱酵素上昇)
Low Platelet count(血小板低下)
一般的な症状としては、頭痛(30%)、視力障害、不快感(90%)と、吐気や嘔吐(30%)と、上腹部の痛み(65%)等を呈する。妊娠高血圧症候群に伴うことが多いく、その後に子癇を発症する場合も多いとされる。こういった症状を呈してきた場合、緊急に血液検査を行って診断をつけることが重要である。
HELLP症候群の本態は不明な点が多いが、血管攣縮が重要であると考えられている。双胎の頻度が多いことより、子宮が大きくなり腹腔神経叢を圧迫することより反射的に腹腔動脈が攣縮する可能性が考えられる。このような反射をReily現象という。
さらにAT-Ⅲ低値の例が多いとされており、血管攣縮から血流障害を起こし、抗血栓性に働くAT-Ⅲが少ない状況では微小血栓が生じて、血小板減少、肝酵素上昇を引きおこすものと考えられる。フィブリン沈着や内皮障害をきたした微小血管を通過する赤血球は損傷され、溶血をおこし、病的赤血球の出現となる。治療としては、緊急に急遂分娩または帝王切開妊娠継続の終了させる必要がある。
本例でみられた上腹部痛、胆嚢壁肥厚は肝動脈領域の虚血によるものであったと考えられた。
2008年1月27日日曜日
循環障害による急性肝障害①
循環障害から急性肝炎によく似たデータを示す病態がいくつかあります。今回と次回はそういった病態を紹介します。
1回目は急性心筋炎に伴う著明な肝障害例です。
61歳男性
主訴:発熱、咳
現病歴:3日ほど前より発熱あり、家で市販薬内服し様子を見ていた。風邪の精査目的で当院呼吸器内科を受診。11年ほど前に肝機能異常を指摘されたことがあり、消化器内科もついでに受診。飲酒歴があったためアルコール性肝障害疑いとして検査を進めた。
CRP 11.30 mg/dl, Alb 3.8 g/dl, ZTT 3.9 KU, TTT 0.3 KU, ChE 289 IU/l, T-BIL 0.6 mg/dl, D-BIL 0.2 mg/dl, AST 2465 IU/l , ALT 1649 IU/l, LDH 4389 IU/l, ALP 355 IU/l, LAP 102 IU/l, γ-GTP 141 IU/l, Cr 2.06 mg/dl, BUN 45 mg/dl, TCH 176 mg/dl, AMY 90 IU/l, LPS 104 IU/l, NH3 59 μg/dl
WBC 8500, Hb 15.0 g/dl, Plt 14.2万, PT 16.1秒(PT活性 69.0 %)
超音波では下大静脈、肝静脈の拡大と胆嚢壁の著明な肥厚を認めるとともに心臓の運動低下を認めました。
本例は血圧が低く、循環器内科で精査したところ心筋酵素の逸脱やBNPの上昇、心電図異常を認め心筋炎と診断された。CCUに収容し、循環動態が改善することで肝機能も急速に改善した。
BNP 682.2 pg/ml, TnT-1 (+), CK 2918 IU/l, CK-MB 132.8 IU/l
1回目は急性心筋炎に伴う著明な肝障害例です。
61歳男性
主訴:発熱、咳
現病歴:3日ほど前より発熱あり、家で市販薬内服し様子を見ていた。風邪の精査目的で当院呼吸器内科を受診。11年ほど前に肝機能異常を指摘されたことがあり、消化器内科もついでに受診。飲酒歴があったためアルコール性肝障害疑いとして検査を進めた。
CRP 11.30 mg/dl, Alb 3.8 g/dl, ZTT 3.9 KU, TTT 0.3 KU, ChE 289 IU/l, T-BIL 0.6 mg/dl, D-BIL 0.2 mg/dl, AST 2465 IU/l , ALT 1649 IU/l, LDH 4389 IU/l, ALP 355 IU/l, LAP 102 IU/l, γ-GTP 141 IU/l, Cr 2.06 mg/dl, BUN 45 mg/dl, TCH 176 mg/dl, AMY 90 IU/l, LPS 104 IU/l, NH3 59 μg/dl
WBC 8500, Hb 15.0 g/dl, Plt 14.2万, PT 16.1秒(PT活性 69.0 %)
超音波では下大静脈、肝静脈の拡大と胆嚢壁の著明な肥厚を認めるとともに心臓の運動低下を認めました。
本例は血圧が低く、循環器内科で精査したところ心筋酵素の逸脱やBNPの上昇、心電図異常を認め心筋炎と診断された。CCUに収容し、循環動態が改善することで肝機能も急速に改善した。
BNP 682.2 pg/ml, TnT-1 (+), CK 2918 IU/l, CK-MB 132.8 IU/l
2007年7月22日日曜日
サイトメガロウイルスによる伝染性単核球症
生活スタイルの変化により、かつては成人に達するまでにほぼ100%に近い感染率であったサイトメガロウイルス感染症ですが、成人以降で初感染の事例が増えています。今回、典型例を経験したので紹介します。
27歳、男性
入院1週間前より39℃台の発熱が続いていた。近医で感冒として加療を受けるも改善せず、当院受診。肝障害も認め入院。
発熱、全身倦怠感、食欲不振以外には呼吸器症状、消化器症状はなし。
飲酒歴:なし、喫煙歴:なし
最近、多忙で寝不足が続いていた。
入院時の採血で末梢血に異型リンパ球を認めるとともにIgM型のCMV抗体が高値(IgG型も軽度上昇、EBウイルスは既感染パターン)でサイトメガロウイルスによる伝染性単核球症と診断した。入院後も1週間は38℃近い発熱が続いたが、2週目より改善傾向になり、2週で退院となった。
かつては成人のサイトメガロウイルス感染症を見たら免疫不全症(特にAIDS)を疑いましたが、近年は健康成人例が増えています。原因としては成人までの感染機会が減少していることと、本例のように過労から一時的な免疫不全状態になってウイルスが増殖し、病状を悪化させているものと推測されます。
夜更かしと免疫不全については下記の本がわかりやすく解説しています。皆さんも睡眠はしっかり取りましょう。
人生、寝たもの勝ち (単行本)
ポール マーティン (著), Paul Martin (原著), 奥原 由希子 (翻訳)
よく生きるための眠り
たっぷり眠ると……
寿命が延びる
事故に遭わない
免疫力が向上する
記憶力がよくなる
スムーズな人づきあいができる
眠る人にが福が来る
27歳、男性
入院1週間前より39℃台の発熱が続いていた。近医で感冒として加療を受けるも改善せず、当院受診。肝障害も認め入院。
発熱、全身倦怠感、食欲不振以外には呼吸器症状、消化器症状はなし。
飲酒歴:なし、喫煙歴:なし
最近、多忙で寝不足が続いていた。
入院時の採血で末梢血に異型リンパ球を認めるとともにIgM型のCMV抗体が高値(IgG型も軽度上昇、EBウイルスは既感染パターン)でサイトメガロウイルスによる伝染性単核球症と診断した。入院後も1週間は38℃近い発熱が続いたが、2週目より改善傾向になり、2週で退院となった。
かつては成人のサイトメガロウイルス感染症を見たら免疫不全症(特にAIDS)を疑いましたが、近年は健康成人例が増えています。原因としては成人までの感染機会が減少していることと、本例のように過労から一時的な免疫不全状態になってウイルスが増殖し、病状を悪化させているものと推測されます。
夜更かしと免疫不全については下記の本がわかりやすく解説しています。皆さんも睡眠はしっかり取りましょう。
人生、寝たもの勝ち (単行本)
ポール マーティン (著), Paul Martin (原著), 奥原 由希子 (翻訳)
よく生きるための眠り
たっぷり眠ると……
寿命が延びる
事故に遭わない
免疫力が向上する
記憶力がよくなる
スムーズな人づきあいができる
眠る人にが福が来る
2007年6月6日水曜日
麻疹による肝炎
成人の麻疹が流行しています。
先日、肝炎+皮疹の精査で30代前半の患者さんが紹介されましたが麻疹でした。
大人の麻疹をみたのは初めてで皮疹も子供よりも華々しかったです。参考までに写真を載せておきます。
30歳代、男性
2007年5月下旬より39℃台の発熱あり。感冒として近医で加療を受けていたが改善傾向なし。約1週間しても解熱しないことと、症状発現時から徐々に増悪していた皮疹が発病後5日目には全身に広がり、腕では癒合傾向になったため受診。麻疹既往なし。ワクチン接種なし。
頸部リンパ節:腫大なし、口腔内:コプリック斑あり 耳介後部:紅斑顕著 躯幹、上肢>下肢 に融合傾向のある点状紅斑~丘疹あり
先日、肝炎+皮疹の精査で30代前半の患者さんが紹介されましたが麻疹でした。
大人の麻疹をみたのは初めてで皮疹も子供よりも華々しかったです。参考までに写真を載せておきます。
30歳代、男性
2007年5月下旬より39℃台の発熱あり。感冒として近医で加療を受けていたが改善傾向なし。約1週間しても解熱しないことと、症状発現時から徐々に増悪していた皮疹が発病後5日目には全身に広がり、腕では癒合傾向になったため受診。麻疹既往なし。ワクチン接種なし。
頸部リンパ節:腫大なし、口腔内:コプリック斑あり 耳介後部:紅斑顕著 躯幹、上肢>下肢 に融合傾向のある点状紅斑~丘疹あり
登録:
コメント (Atom)