2007年10月22日月曜日

C型肝炎の新情報(JDDW2007)

JDDW2007 KobeでC型肝炎について勉強してきました。

C型肝炎では12週までにHCV-RNAが消失するearly virologic response (EVR) 例ではPEGインターフェロン+リバビリン48週投与の有効性が高いこと、EVR達成が難しい条件として、高齢女性、初期投与量不足が挙げられ、投与期間の延長(72週)が有効であることが以前から指摘されていましたが、本学会で多施設の多くの症例に基づくデータからほぼ確認されました。

さらにreal time PCRによるHCV-RNA定量の出現で、IFN治療中のより詳細なウイルス変動を観察することが可能となることが紹介されました。

本法は現在使用されているアンプリコア法の定性よりも少ない量のウイルスを測定することが可能な一方で、高ウイルス量でも定量性があること、genotypeでウイルス量が左右されない利点もあり、本法が保険適応になれば肝炎診療、特にIFN治療は劇的に変化するものと思われます。

2007年10月21日日曜日

エンテカビル耐性出現率

JDDW-2007でエンテカビル国内治験における耐性出現率の報告がありました。

初回投与例では3年で約3%でしたが、lamivudine耐性例では3年で35%の結果でした。
有意差はありませんが、エンテカビルの初回投与量が少ない症例でやや耐性ウイルスの出現が多い傾向にありました(0.01~0.1mg群で4%、0.5mg群で1.5%)。

2007年10月1日月曜日

ベザトールが有効であった原発性胆汁性肝硬変

原発性胆汁性肝硬変(PBC)の治療薬としてはウルソデオキシコール酸が有名ですが、最近高脂血症の治療薬であるbezafibrate(商品名ベザトール)に胆汁排泄促進作用があり、PBCの治療薬として認知されるようになっています。今回はベザトールが有効であったPBC例を経験しましたので報告します。

症例は30歳代後半の女性です。抗ミトコンドリア抗体陽性で胆汁うっ滞型肝障害を呈することよりPBCと診断されました。2006年9月よりウルソデオキシコール酸の内服を開始しましたが、肝機能の改善は今一歩でした。2007年6月よりベザトールの併用を開始したところ肝機能の改善をみています。
ベザトールは投与開始して半年以上経過しても改善傾向が続くこともあるので、後日、その後の経過を報告します。

      
   

2007年9月23日日曜日

エンテカビル(商品名バラクルード)の長期投与が可能となります

2006年9月にB型肝炎ウイルスに対する内服の抗ウイルス剤のエンテカビル(商品名 バラクルード)が保険収載となり、B型肝炎の治療の幅が広がりましたが,新薬のため2週間しか処方できませんでした。発売から1年が経過し,10月1日より2週間以上の長期投与が可能となります。



これまで仕事を休んで薬を取りに来られていた患者さんの負担が軽くなります。



2007年9月15日土曜日

超音波造影剤

東京医大の森安史典先生の講演会があり、新しい超音波造影剤「ソナゾイド」について勉強してきました。

すでに学会などで動脈相における造影効果には驚いていましたが、今回の講演では単に造影早期の腫瘍のvascularityの評価だけでなく、造影剤注入後20-30分のKupffer image(肝細胞癌では造影剤が抜ける)を利用して、ラジオ波焼灼療法を行ったり、Kupffer imageで抜けた部分についてもう一度造影剤を注入することで動脈相を評価するなど色々な工夫を拝聴できました。

唯一残念なことはこのような素晴らしい造影は最新鋭の超音波診断装置でないと行えないことです。このような装置が広く普及して肝癌の診断、治療診療がより早期に行えるようになることを祈っています。




2007年9月10日月曜日

Wilson病の長期経過(超音波像を中心に)

2007.6.23のブログに健診で発見されたWilson病を紹介しましたが,15年以上前に無症状で発見され,D-ペニシラミンで治療を続けていたWilson病の患者さんで久しぶりに超音波をとる機会がありました。診断時にみられた結節エコーはかなり消失し,きれいになっていました。

肝硬変でも原因を取ってやればよくなる症例と思われ紹介させていただきます。今後はB型肝硬変やC型肝硬変でも核酸アナログやインターフェロンで肝硬変がよくなる症例も増えてくると思います。

診断時16歳男性。 診断時 セルロプラスミン 2.7 mg/dl, 尿中銅 815.3μg/day






2007年9月1日土曜日

HBs抗原が陰性化したHBVキャリアに発生した肝細胞癌

高齢になるとHBVキャリアでもHBs抗原が陰性化して、一見、基礎肝疾患なしと間違える症例があります。今回はそのような症例で肝細胞癌の合併を経験しましたので紹介します。
本症例はHBs抗原陽性の時期がわかっていますので、HBVキャリアと診断できますが、そのような過去がわからない症例では、HBc抗体高値が診断に役に立ちます。

75歳、男性。たまたま行った超音波で肝SOLを指摘され紹介。10年前にHBs抗原陽性といわれたことがあるが放置。
Alb  4.0 mg/dl,   ChE  225  IU/l, T-BIL 0.6 mg/dl,  AST 26 IU/l,  ALT 21 IU/l, LDH 173 IU/l,
γ-GTP   50  IU/l,  AFP  6 ng/ml,  PIVKA-2 141 mAU/ml,  Plt 15.2万, PT活性 100%
HBs抗原(-), HBs抗体(-), HBe抗原(-), HBe抗体(+)98.3%, HBc抗体: 原血清  97.6%、200倍希釈93.9%

画像は典型的な肝細胞癌