2007年9月23日日曜日

エンテカビル(商品名バラクルード)の長期投与が可能となります

2006年9月にB型肝炎ウイルスに対する内服の抗ウイルス剤のエンテカビル(商品名 バラクルード)が保険収載となり、B型肝炎の治療の幅が広がりましたが,新薬のため2週間しか処方できませんでした。発売から1年が経過し,10月1日より2週間以上の長期投与が可能となります。



これまで仕事を休んで薬を取りに来られていた患者さんの負担が軽くなります。



2007年9月15日土曜日

超音波造影剤

東京医大の森安史典先生の講演会があり、新しい超音波造影剤「ソナゾイド」について勉強してきました。

すでに学会などで動脈相における造影効果には驚いていましたが、今回の講演では単に造影早期の腫瘍のvascularityの評価だけでなく、造影剤注入後20-30分のKupffer image(肝細胞癌では造影剤が抜ける)を利用して、ラジオ波焼灼療法を行ったり、Kupffer imageで抜けた部分についてもう一度造影剤を注入することで動脈相を評価するなど色々な工夫を拝聴できました。

唯一残念なことはこのような素晴らしい造影は最新鋭の超音波診断装置でないと行えないことです。このような装置が広く普及して肝癌の診断、治療診療がより早期に行えるようになることを祈っています。




2007年9月10日月曜日

Wilson病の長期経過(超音波像を中心に)

2007.6.23のブログに健診で発見されたWilson病を紹介しましたが,15年以上前に無症状で発見され,D-ペニシラミンで治療を続けていたWilson病の患者さんで久しぶりに超音波をとる機会がありました。診断時にみられた結節エコーはかなり消失し,きれいになっていました。

肝硬変でも原因を取ってやればよくなる症例と思われ紹介させていただきます。今後はB型肝硬変やC型肝硬変でも核酸アナログやインターフェロンで肝硬変がよくなる症例も増えてくると思います。

診断時16歳男性。 診断時 セルロプラスミン 2.7 mg/dl, 尿中銅 815.3μg/day






2007年9月1日土曜日

HBs抗原が陰性化したHBVキャリアに発生した肝細胞癌

高齢になるとHBVキャリアでもHBs抗原が陰性化して、一見、基礎肝疾患なしと間違える症例があります。今回はそのような症例で肝細胞癌の合併を経験しましたので紹介します。
本症例はHBs抗原陽性の時期がわかっていますので、HBVキャリアと診断できますが、そのような過去がわからない症例では、HBc抗体高値が診断に役に立ちます。

75歳、男性。たまたま行った超音波で肝SOLを指摘され紹介。10年前にHBs抗原陽性といわれたことがあるが放置。
Alb  4.0 mg/dl,   ChE  225  IU/l, T-BIL 0.6 mg/dl,  AST 26 IU/l,  ALT 21 IU/l, LDH 173 IU/l,
γ-GTP   50  IU/l,  AFP  6 ng/ml,  PIVKA-2 141 mAU/ml,  Plt 15.2万, PT活性 100%
HBs抗原(-), HBs抗体(-), HBe抗原(-), HBe抗体(+)98.3%, HBc抗体: 原血清  97.6%、200倍希釈93.9%

画像は典型的な肝細胞癌



2007年7月22日日曜日

サイトメガロウイルスによる伝染性単核球症

生活スタイルの変化により、かつては成人に達するまでにほぼ100%に近い感染率であったサイトメガロウイルス感染症ですが、成人以降で初感染の事例が増えています。今回、典型例を経験したので紹介します。

27歳、男性
入院1週間前より39℃台の発熱が続いていた。近医で感冒として加療を受けるも改善せず、当院受診。肝障害も認め入院。
発熱、全身倦怠感、食欲不振以外には呼吸器症状、消化器症状はなし。
飲酒歴:なし、喫煙歴:なし
最近、多忙で寝不足が続いていた。
入院時の採血で末梢血に異型リンパ球を認めるとともにIgM型のCMV抗体が高値(IgG型も軽度上昇、EBウイルスは既感染パターン)でサイトメガロウイルスによる伝染性単核球症と診断した。入院後も1週間は38℃近い発熱が続いたが、2週目より改善傾向になり、2週で退院となった。

かつては成人のサイトメガロウイルス感染症を見たら免疫不全症(特にAIDS)を疑いましたが、近年は健康成人例が増えています。原因としては成人までの感染機会が減少していることと、本例のように過労から一時的な免疫不全状態になってウイルスが増殖し、病状を悪化させているものと推測されます。

夜更かしと免疫不全については下記の本がわかりやすく解説しています。皆さんも睡眠はしっかり取りましょう。

人生、寝たもの勝ち (単行本)
ポール マーティン (著), Paul Martin (原著), 奥原 由希子 (翻訳)
よく生きるための眠り
たっぷり眠ると……
寿命が延びる
事故に遭わない
免疫力が向上する
記憶力がよくなる
スムーズな人づきあいができる
眠る人にが福が来る

2007年7月15日日曜日

B型肝炎に対するエンテカビル療法

2007年6月16日に岡山で開催された虎の門病院、熊田博光先生のB型肝炎に対するエンテカビル療法の講演会を聞いてきました。
最近、問題になっているエンテカビル耐性ウイルスについての詳しい話が聞けましたので紹介します。

国内治験症例(抗ウイルス剤初回投与例)での検討では、投与開始3年の時点で開始時のウイルス量が非常に多かった症例群で約3%、少なかった群で約1.5%の出現率でした。ただし、解析が終わったのが半数の症例であり、最終的にはこの倍の頻度になるのではないかとのコメントでした。

一方、ラミブジン耐性症例での検討では、投与開始3年で24%の出現率でした。ただし、約1/3の症例で解析が終わっておらず、最終的には35%程度になるのではないかとのコメントでした。
ラミブジン耐性症例に対して以前より行われているアデフォビルとの併用療法については、自験例の成績で、HBV-DNA陰性化率が48週49%、96週66%、144週84%で、ALT正常化率も3年で92%であり、ラミブジン耐性例には従来通りアデフォビルの併用が推奨される成績でした。

以上を踏まえ2007年度版の治療ガイドラインが示されました。





















2007年7月8日日曜日

C型肝炎に対するペグインターフェロン+リバビリン併用療法の実際

2007年6月21日に倉敷で開かれた川崎医大肝胆膵内科、久保木眞先生のペグインターフェロン+リバビリン併用療法の講演会を聞いてきました。

お一人で1000例以上のIFN治療経験がある先生だけに、日本の大家と呼ばれる先生の講演でも聞かれないような細かなノウハウを聞くことができました。

困った副作用
・皮疹:抗アレルギー剤やステロイド外用剤で辛抱しているとそのうちに軽快してくる症例も多い。困った場合は少量のステロイドの短期投与が有効。
・口内炎:一般的な口内炎の治療は無効なことが多く、プレドニン5mg4日程度の投与が有効なことがある。
・血小板減少:血小板容積(MPV)が増えてこない症例では骨髄での血小板産生が亢進していないので出血のリスクが高くなるのでIFNの減量が望ましい。

高齢者(65歳以上)
・ペグインターフェロンの量は1.2μg/kgで開始。体重が減少したら、その体重にあわせてIFNの量を10μg単位で減量
・リバビリンは10mg/kgで開始。100mg単位で調節。500mgの場合は600mg(3cap)と400mg(2cap)を隔日に投与することで平均500mg投与とする。

インターフェロン抗体(PEG-IFNα2aの成績)
・治験では4.1%の出現率。
・自験例ではIFN治療歴のない症例で3.8%、治療歴のある症例で20%であった。
・IFN抗体が出現した症例では他のα型製剤に対しても交叉反応があることが多く、β型での治療が必要になる。