循環障害から急性肝炎によく似たデータを示す病態がいくつかあります。今回と次回はそういった病態を紹介します。
1回目は急性心筋炎に伴う著明な肝障害例です。
61歳男性
主訴:発熱、咳
現病歴:3日ほど前より発熱あり、家で市販薬内服し様子を見ていた。風邪の精査目的で当院呼吸器内科を受診。11年ほど前に肝機能異常を指摘されたことがあり、消化器内科もついでに受診。飲酒歴があったためアルコール性肝障害疑いとして検査を進めた。
CRP 11.30 mg/dl, Alb 3.8 g/dl, ZTT 3.9 KU, TTT 0.3 KU, ChE 289 IU/l, T-BIL 0.6 mg/dl, D-BIL 0.2 mg/dl, AST 2465 IU/l , ALT 1649 IU/l, LDH 4389 IU/l, ALP 355 IU/l, LAP 102 IU/l, γ-GTP 141 IU/l, Cr 2.06 mg/dl, BUN 45 mg/dl, TCH 176 mg/dl, AMY 90 IU/l, LPS 104 IU/l, NH3 59 μg/dl
WBC 8500, Hb 15.0 g/dl, Plt 14.2万, PT 16.1秒(PT活性 69.0 %)
超音波では下大静脈、肝静脈の拡大と胆嚢壁の著明な肥厚を認めるとともに心臓の運動低下を認めました。
本例は血圧が低く、循環器内科で精査したところ心筋酵素の逸脱やBNPの上昇、心電図異常を認め心筋炎と診断された。CCUに収容し、循環動態が改善することで肝機能も急速に改善した。
BNP 682.2 pg/ml, TnT-1 (+), CK 2918 IU/l, CK-MB 132.8 IU/l
2008年1月27日日曜日
2008年1月13日日曜日
2007年12月10日月曜日
副腎不全を合併したC型肝炎
肝炎ウイルスマーカーが陽性だと、それによる肝障害と思い込んで他の病気に気付くのが遅れることがあります。
今回は副腎不全の診断に苦慮した1例を紹介します。
症例は62歳、男性。食思不振で当院受診。肝障害およびHCV抗体陽性があり、当科紹介。強ミノCを投与するも肝障害の改善傾向に乏しく,全身倦怠感,食思不振は増強した。心身症を疑い,初診から3ヶ月目よりデプロメール開始するも無効。 初診後4ヶ月目の 血液検査で低Na血症(124 mEq/l)を認めたため,副腎不全を疑いホルモンを測定したところコーチゾールS 1.1μg/dl,17-KS「 0.3mg/day, 17-OHCS 0.8mg/dayと副腎不全であった。さらにTSH 0.30 μU/ml, free-T4 0.38 ng/dl, free-T3 1.7 ng/dlと甲状腺機能低下症も合併していた。MRIで下垂体に嚢胞あり,これによる圧排で副腎および甲状腺刺激ホルモンの分泌が低下した機能低下症と考えられた。
ステロイド補充(ソルコーテフ100mg→コートリル10mg2錠)+甲状腺ホルモン内服で、症状および肝機能は著明に改善した。
今回は副腎不全の診断に苦慮した1例を紹介します。
症例は62歳、男性。食思不振で当院受診。肝障害およびHCV抗体陽性があり、当科紹介。強ミノCを投与するも肝障害の改善傾向に乏しく,全身倦怠感,食思不振は増強した。心身症を疑い,初診から3ヶ月目よりデプロメール開始するも無効。 初診後4ヶ月目の 血液検査で低Na血症(124 mEq/l)を認めたため,副腎不全を疑いホルモンを測定したところコーチゾールS 1.1μg/dl,17-KS「 0.3mg/day, 17-OHCS 0.8mg/dayと副腎不全であった。さらにTSH 0.30 μU/ml, free-T4 0.38 ng/dl, free-T3 1.7 ng/dlと甲状腺機能低下症も合併していた。MRIで下垂体に嚢胞あり,これによる圧排で副腎および甲状腺刺激ホルモンの分泌が低下した機能低下症と考えられた。
ステロイド補充(ソルコーテフ100mg→コートリル10mg2錠)+甲状腺ホルモン内服で、症状および肝機能は著明に改善した。
2007年11月18日日曜日
自己免疫性肝炎と誤診しかけた薬物性肝障害
一般の方は健康食品で肝障害をおこす認識はほとんどなく、病歴を聴取する時に「クスリ」として申告してくれないことがしばしばあります。
今回は、自己免疫性肝炎と誤診しそうになった症例を紹介します。症例は47歳、女性。SLEで経過観察中でした(ステロイド内服なし)。肝障害の悪化があり精査目的で入院となりました。抗核抗体2560倍、γグロブリン1.47g/dl、ウイルスマーカー陰性、飲酒なし。以上の病歴から自己免疫性肝炎の国際スコアが生検所見なしでも14点(疑診)であり、自己免疫性肝炎を強く疑いました。 10月6日に肝生検を施行。炎症細胞浸潤はほとんどなく、肝細胞の変性所見が目立ち、代謝障害が疑われる組織像でした。病歴を再度聴取すると、入院の1年前から健康食品を内服し 、入院1ヶ月前より内服量を増量していたことが判明しました。健康食品を10月8日から中止すると肝機能は1週間後あたりから著明に改善しました。
最近は健康食品による薬物性肝障害も増加しています。2005年の肝臓学会誌に民間薬、健康食品による薬物性肝障害の論文も掲載されており、肝炎の鑑別として注意が必要な領域と思います。http://www.jstage.jst.go.jp/article/kanzo/46/3/142/_pdf
今回は、自己免疫性肝炎と誤診しそうになった症例を紹介します。症例は47歳、女性。SLEで経過観察中でした(ステロイド内服なし)。肝障害の悪化があり精査目的で入院となりました。抗核抗体2560倍、γグロブリン1.47g/dl、ウイルスマーカー陰性、飲酒なし。以上の病歴から自己免疫性肝炎の国際スコアが生検所見なしでも14点(疑診)であり、自己免疫性肝炎を強く疑いました。 10月6日に肝生検を施行。炎症細胞浸潤はほとんどなく、肝細胞の変性所見が目立ち、代謝障害が疑われる組織像でした。病歴を再度聴取すると、入院の1年前から健康食品を内服し 、入院1ヶ月前より内服量を増量していたことが判明しました。健康食品を10月8日から中止すると肝機能は1週間後あたりから著明に改善しました。
最近は健康食品による薬物性肝障害も増加しています。2005年の肝臓学会誌に民間薬、健康食品による薬物性肝障害の論文も掲載されており、肝炎の鑑別として注意が必要な領域と思います。http://www.jstage.jst.go.jp/article/kanzo/46/3/142/_pdf
2007年11月11日日曜日
慢性肝炎の治療ガイド 2008
日本肝臓学会 編纂の「慢性肝炎の治療ガイド 2008」が 文光堂から発行されました (2007/10)。
内容は急性肝炎から肝癌まで広範にわたっていますが、非常にコンパクトにまとまっており、研修医の先生にはお勧めですし、予備知識のある患者さんも十分理解できる内容と思います。
肝臓学会公認の本ですので、現時点では最も信頼に足る内容を持った本といえます。
http://www.amazon.co.jp/%E6%85%A2%E6%80%A7%E8%82%9D%E7%82%8E%E3%81%AE%E6%B2%BB%E7%99%82%E3%82%AC%E3%82%A4%E3%83%89-2008-%E6%97%A5%E6%9C%AC%E8%82%9D%E8%87%93%E5%AD%A6%E4%BC%9A/dp/4830618671/ref=sr_1_1?ie=UTF8&s=books&qid=1198033046&sr=1-1
内容は急性肝炎から肝癌まで広範にわたっていますが、非常にコンパクトにまとまっており、研修医の先生にはお勧めですし、予備知識のある患者さんも十分理解できる内容と思います。
肝臓学会公認の本ですので、現時点では最も信頼に足る内容を持った本といえます。
http://www.amazon.co.jp/%E6%85%A2%E6%80%A7%E8%82%9D%E7%82%8E%E3%81%AE%E6%B2%BB%E7%99%82%E3%82%AC%E3%82%A4%E3%83%89-2008-%E6%97%A5%E6%9C%AC%E8%82%9D%E8%87%93%E5%AD%A6%E4%BC%9A/dp/4830618671/ref=sr_1_1?ie=UTF8&s=books&qid=1198033046&sr=1-1
2007年10月28日日曜日
門脈圧亢進症における脾臓の重要性
JDDW2007の肝臓学会のワークショップ6「肝疾患における脾臓摘出術・部分的脾動脈塞栓療法(PSE)の功罪」で、脾摘、PSEで脾静脈血流が低下させることで門亢症が劇的に改善すること(静脈瘤の改善は47%、portal hypertensive gastropathyの改善は43-60%)、さらに血小板が増加することでC型肝炎に対するIFN療法や肝臓癌に対する化学療法が完遂できることが報告されました。
従来より脾摘の効果は学会誌などで報告されていましたが、PSEも脾臓体積の70%以上を塞栓すると脾摘に匹敵する効果が得られることがわかってきました。一方で塞栓の範囲が30%以下と不十分な場合は血小板増加などの効果は一過性であること。さらに巨脾の症例では広範な塞栓(540ml以上)は合併症が多くなることも報告されました。また、Child C患者では期待した効果が得られにくく、本療法は肝予備能に比較して脾腫および門亢症が目立つ症例が良い適応である印象を受けました。
脾摘後の血栓症も10%程度にみられ、抗凝固療法と慎重な経過観察が必要であることも合わせて報告されていました。
2007年10月22日月曜日
C型肝炎の新情報(JDDW2007)
JDDW2007 KobeでC型肝炎について勉強してきました。
C型肝炎では12週までにHCV-RNAが消失するearly virologic response (EVR) 例ではPEGインターフェロン+リバビリン48週投与の有効性が高いこと、EVR達成が難しい条件として、高齢女性、初期投与量不足が挙げられ、投与期間の延長(72週)が有効であることが以前から指摘されていましたが、本学会で多施設の多くの症例に基づくデータからほぼ確認されました。
さらにreal time PCRによるHCV-RNA定量の出現で、IFN治療中のより詳細なウイルス変動を観察することが可能となることが紹介されました。
本法は現在使用されているアンプリコア法の定性よりも少ない量のウイルスを測定することが可能な一方で、高ウイルス量でも定量性があること、genotypeでウイルス量が左右されない利点もあり、本法が保険適応になれば肝炎診療、特にIFN治療は劇的に変化するものと思われます。
C型肝炎では12週までにHCV-RNAが消失するearly virologic response (EVR) 例ではPEGインターフェロン+リバビリン48週投与の有効性が高いこと、EVR達成が難しい条件として、高齢女性、初期投与量不足が挙げられ、投与期間の延長(72週)が有効であることが以前から指摘されていましたが、本学会で多施設の多くの症例に基づくデータからほぼ確認されました。
さらにreal time PCRによるHCV-RNA定量の出現で、IFN治療中のより詳細なウイルス変動を観察することが可能となることが紹介されました。
本法は現在使用されているアンプリコア法の定性よりも少ない量のウイルスを測定することが可能な一方で、高ウイルス量でも定量性があること、genotypeでウイルス量が左右されない利点もあり、本法が保険適応になれば肝炎診療、特にIFN治療は劇的に変化するものと思われます。
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