2010年10月10日日曜日

B型肝炎再活性化による劇症肝炎の現状と対策

B型肝炎再活性化による劇症肝炎の現状と対策(日消誌107: 1426-1433, 2010)

移植や抗癌剤治療、さらにはTNF-α抗体など免疫を強く抑制する治療でB型肝炎が再活性化され、劇症化する症例が報告されています。
本論文は、そのまとめで対策のガイドラインも掲載されています。
報告例では悪性リンパ腫の治療例が多く、特にリツキシマブの使用例が多いことが最近の特徴です。
それを踏まえての診療ガイドラインが作成されています。

2010年7月30日金曜日

メタボの生活指導に有用な本が出版されました  

兵庫で整形外科を開業する中村巧先生がご自身のメタボ対策を1冊の本にまとめられました。
100歳を超えて人生を走れる身体づくり―Dr.中村&Dr.坂東の 目からうろこの21世紀の新しい食事と運動療法

メタボリック症候群の治療で最も難しいのが治療です。多くの内科医が減量に成功できず、薬物療法主体で治療をしているのが現状です。
整形外科医である著者が、内科医の視点とは全く違った方法で減量プログラムに成功し、そのノウハウを余すことなく公開されています。
内科医である私が本書を読んだ時に目からウロコの連続であるとともに、自分の不勉強を大いに恥じました。
本書を参考にメタボの患者さんの減量に取り組むとともに、メタボの患者さんの予後を左右するであろう筋肉量低下によるロコモーティブ症候群に対しても積極的に介入していきたいと思いました。

2009年10月30日金曜日

β-インターフェロン+リバビリン併用療法が保険適応に 

C型肝炎に対するβ-インターフェロンとリバビリンの併用療法が保険適応となりました。インターフェロンの投与方法は最初の4週を600万単位連日、その後は週3回となっています。


β型は鬱症状が出にくいインターフェロンであり、鬱症状が出やすい患者さんの治療の選択枝が広がりました。



2008年6月8日日曜日

第44回肝臓学会総会(松山)に参加して

6月5日~6月6日にかけて松山で第44回日本肝臓学会が開催され、参加してきました。

C型肝炎、肝硬変、自己免疫性肝疾患、薬物性肝障害のセッションを聞いて来ました。

C型肝炎のセッションでは、現在、標準治療となっているペグインターフェロン+リバビリン併用療法について、ウイルス量の反応で72週にすべき症例の選択がかなり正確に行えるようになったこと、新規の抗ウイルス剤であるプロテアーゼ阻害剤・telaprevir (VX-950)の本格的な治験が今秋から開始になること、 高脂血症治療薬であるフルバスタチンの併用療法でウイルス消失率が上がってくることなどが報告されていました。

肝硬変については、脂肪性肝炎の症例が増加していることが注目され、肝癌合併例の1.6%、非合併例の2.7%が脂肪性肝炎であることがわかりました。

自己免疫性肝炎のセッションでは高齢者、男性、急性肝炎発症例といった非典型例が案外多く、薬物性肝障害との鑑別が難しい症例もあることが報告されていました。

薬物性肝障害のセッションでは最近10年を前後期に分けると、市販薬の頻度が高くなってきたこと(8.1%→10.9%)、アレルギー性機序を疑わせる好酸球陽性率が低下していること(31→24%)、症状を伴わない症例が増加していることがあげられていました。また、従来から診断に重要視されているリンパ球幼弱化試験の陽性率は36%であることがわかりました。予後は治癒が87%、死亡例が3.4%でした。原因薬剤として多い薬剤は塩酸チクロピジン36例、ロキソプロフェンナトリウム24例、フェニトイン15例、カルバマゼピン15例、ウコン13例でした。

2008年4月28日月曜日

第37回肝癌症例検討会(混合型肝癌)

4月26日に東京で第37回肝癌症例検討会が開催され、参加してきました。

今回のテーマは「混合型肝癌」でしたが、基調講演に加えて各施設から様々な混合型肝癌症例が報告され、今まで持ったイメージとかなり違うことがよく分かりました。

印象的だったのは、HCV関連の症例が多いこと、術前診断は肝細胞癌であることが多いこと、肝細胞癌、胆管細胞癌以外に肉腫様変化や扁平上皮癌の成分を持つものもあることです。

半年後にはproceeding (Liver Cancer)になるので読み直すのが楽しみです。Liver Cancerは癌と化学療法社から出版されており、下記HPで紹介されています。
http://www3.ocn.ne.jp/~ccp/liver/f_liver.html

2008年4月21日月曜日

感染症学会報告

4月17日~18日に松江で開かれた日本感染症学会に参加してきました。

初日に東芝病院研究部の三代俊治先生の肝炎ウイルスのオーバービューがありました。今回は三代先生の地元である島根県での開催であり、出雲弁の話や、出雲風土記の話まで出て、いつも以上に面白い内容でした。お得意のE型肝炎ではgenotypeが本州と北海道で異なり、そのことが肝炎の重症度に関連していることが紹介されていました。

また一般演題では、最近増加しているgenotypeAの急性B型肝炎において一定頻度でHIVの重感染あり、使用する核酸アナログの種類に注意が必要であることが興味深かったです。

肝臓とは関係ない講演の中にも面白いものがありました。特に興味深かったのは、東京慈恵医大ウイルス学、近藤一博先生の「ヘルペスウイルスの潜伏感染と慢性疾患」の講演で、HHV-6というウイルスが慢性疲労症候群やうつ病と関連している成績を示されました。HHV-6はマクロファージや脳のグリア細胞に持続感染しているため、再活性化すると免疫異常や精神神経障碍をおこす可能性があること、再活性化を示唆する抗体が慢性疲労症候群でうつがある症例、うつ病、躁うつ病で健常人より高い陽性率であること、再活性化は仕事による生理的な疲労でも起こりうることを示されました。
こういう成績を見ると、無理のし過ぎは良くないと思われました。
詳しい内容がネット上に公開されています。興味のある方は下記HPをご覧下さい。

http://www.jst.go.jp/shincho/db/seika/2005_s/2005_s_3/2005_s_3_hiroukan/2005_s_3_hiroukan_1_1_4.htm

2008年3月9日日曜日

胆汁の重要性

52歳,男

入院1ヶ月前から心窩部痛あり。入院3日前に近医に黄疸を指摘され,総胆管結石嵌頓が判明。当科紹介となりました。
入院後3日目にENBD挿入したところ,1日780-1350mlの排液ありましたが、
黄疸が増悪するとともに低ナトリウム血症も進行してきたために入院後14日目に内瘻化を施行。検査値は著明に改善しました。
胆道外科領域では胆汁が肝再生を促す効果がある効果があることが知られており、外瘻化した胆汁を飲むことが昔から行われてきました。
胆汁は腸肝循環を行っており、胆汁成分が腸管内にまったく入らない外瘻は胆汁の流れに影響を及ぼしている可能性があり、早期の内瘻化が重要であることを教えてくれた症例でした。