2011年7月14日木曜日

世界一受けたい授業 痩せていても危ない!日本人を蝕む第3の脂肪 2011年7月9日

7月9日放映の「世界一受けたい授業」で東京医科歯科大の小川佳宏先生が「痩せていても危ない!日本人を蝕む第3の脂肪」というタイトルで講義をされました。

脂肪には①皮下脂肪、②内臓脂肪、③第3の脂肪の3種類があります。

皮下脂肪:お腹などでつまむことができ、筋肉の外側にある脂肪
内臓脂肪:大腸や小腸のまわりについている脂肪、内臓脂肪が多いとお腹がぷくっと出てきます
第3の脂肪:皮下脂肪、内臓脂肪ともにこれ以上蓄積できなくなると、脂肪が肝臓・筋肉・血管などに蓄積していきます。別名、「異所性脂肪」とも言われます。

肝臓に脂肪が溜まると脂肪肝になり、一部は非アルコール性脂肪肝炎(NASH)という病気になってしまいます。NASHを放置すると肝硬変や肝臓癌にまで進行します。先日の「ためしてガッテン」でも紹介されていました
http://kan-kanzou.blogspot.com/2011/07/blog-post_01.html

第3の脂肪の予防法
第3の脂肪は3つの脂肪の中で一番減りやすい脂肪です。
関連記事:NHKためしてガッテン「決定版!こんな簡単にやせちゃいましたダイエットSP」
  http://kan-kanzou.blogspot.com/2011_01_01_archive.html

厚生労働省が定めた体内の脂肪を減らすための運動量を示す数値メッツ(METs=metabolic equivalents)で見ると、それぞれの運動を1時間した時に獲得できるメッツは次の通りですが、異所性脂肪を予防するには1週間23METs・時間の運動が必要とされています。


2011年7月7日木曜日

講演会「C型肝炎治療の進歩(名古屋市大 田中靖人先生)

7月5日に、講演会「C型肝炎治療の進歩-ガイドラインから個別化治療へ-(名古屋市大 田中靖人先生)を聞いてきました。

田中先生は、C型肝炎に対するペグインターフェロン+リバビリン併用療法の宿主側の効果予測因子としてIL-28Bを発見された方です。
ちょうど1年前の肝臓学会誌に「座談会 C型肝炎ウイルス感染と宿主因子:特にIL28Bについて」が掲載されていますが、今回は秋にも保険適応が予想されている新規の抗ウイルス剤テラプレビルによる3剤併用療法を意識した講演内容になっていました。肝臓学会誌の内容は http://www.jstage.jst.go.jp/article/kanzo/51/7/51_327/_article/-char/ja から閲覧できます。

IL-28BはIFN-λファミリーで従来から肝炎の治療に使われていたIFN-αやβとは別の経路で抗ウイルス作用を発揮していること、水平感染における自然排除に関連していること、さらには肝臓だけでなく免疫細胞にも発現しており、両者がきちんと働かないとHCVが排除できない(これは移植例での抗ウイルス療法を行うときに重要になってきます)ことが分かってきました。

テラプレビルはHCVのプロテアーゼを阻害する薬で、従来のペグインターフェロン+リバビリン併用療法に併用することで、1型、高ウイルス量の症例のウイルス消失率を50%から70%に高めることができます。一方で、治療効果が十分に得られない場合は薬剤耐性を起こす確率が高く、今後、臨床応用される他のプロテアーゼ阻害剤の効果を落とす可能性があります。

ここでIL-28Bとコア変異の両者の測定が効果予測因子として重要になって来ます。
IL-28Bがmajor homoであれば約90%の著効率になり、積極的な適応になります。
IL-28Bがminorの場合は、コアがwildの場合、62.5%の著効率であるのに対し、mutantの場合は14.3%と極端に著効率が落ちるので、IL-28Bがminorかつコアがmutantである場合は新規の抗ウイルス剤を待つか、IFN少量長期投与などで抗炎症療法を行うべきとの話でした。

2011年7月1日金曜日

「肝臓の健康を守れSP」 NHKためしてガッテン6月29日放送

脂肪肝が肝硬変、肝臓癌に進行する(済生会吹田病院 岡上武先生)

番組では、脂肪肝の中に肝硬変、肝臓癌に進行する可能性のある非アルコール性脂肪肝炎(NASH)があり、実際に20年以上の経過で肝臓癌を発病した症例が紹介されていました。
NASHは、当初は著明な脂肪化を認めますが、肝硬変、肝臓癌と進行するうちに脂肪が消失し、NASHの存在が診断できなくなることがあります(burn out NASH)
現在、日本には1000万人の脂肪肝患者がおり、そのうち2割がNASHである可能性があるとのことです。
脂肪肝といって甘く見てはいけないことを最後に岡上先生が強調されていました。


脂肪肝の治療の新知見(高知大 西原利治先生)

脂肪を燃やすためには、ぐっすり眠ることが大切。これは、眠っている間は糖をエネルギーとして必要とする脳が活動を止めて、脂肪をエネルギーとする心臓のみが活動しているために、エネルギー工場である肝臓は脂肪を分解してエネルギーを作るためです。
夜更かしをすることは、脂肪が燃えにくいことになり、脂肪肝治療にとっては望ましくないことも分かりました。


鉄過剰にご用心(三重大学 岩田加壽子先生)

C型肝炎やNASHの患者さんで、肝細胞内で鉄過剰状態になると、その鉄が酸化して、肝臓に炎症を起こします。
肝臓によいといわれる「ウコン」の一部に鉄を過剰に含んだものがあります。鉄過剰をみる私評に「フェリチン値」があります。フェリチン値が上昇している場合は要注意です。
治療には鉄制限食(1日6mg以下)がありますが、効果が不十分な場合には瀉血を行います。

2011年6月24日金曜日

歯周病が糖尿病や動脈硬化を悪化させる

6月22日放送のNHKためしてガッテン「緊急警報 免疫力を低下させ突然死を招く感染症が全国まん延中」で、歯周病菌が糖尿病や動脈硬化を悪化させる原因になっていることが紹介されました。

歯ぐきで歯周病菌が繁殖すると、体の免疫細胞が歯周病菌と戦うために集まってきます。歯周病菌をやっつけるために免疫細胞のマクロファージが仲間を呼ぶためにある物質(TNF-α)を放出しますが、この物質は一方で血液中のインスリンの働きを低下させ、糖尿病を悪化させます。番組ではインスリンの働きを阻害することから「阻害君」と呼ばれていました。

歯周病菌は歯ぐきから血管の中に入って、血液に含まれる血小板の中に入って血管の中を移動します。さらに菌から出る毒は、血小板や赤血球を集めて塊にしてしまう事が実験でわかりました。これが血管を詰める動脈硬化巣になっていきます。

歯周病のことを軽く見てはいけない。しっかりとケアをしていかなければと思いました。

2011年6月16日木曜日

脂肪性肝炎(NASH)における性差

脂肪性肝炎(NASH)の頻度は年齢別、性別でかなりの違いがあります。
それについて東京女子医大の橋本先生が論文にされています。
   (J Gastroenterology 46(suppl1) 63-69, 2011)



脂肪肝全体の頻度は男性では30歳以降で25%を超えています。女性では閉経後の50歳以降での脂肪肝の頻度が20%前後になります。これらの成績から、健診を受ける中年以降の方は大体2割ぐらいが脂肪肝であるという認識を持っておく必要があります。


脂肪性肝炎については、若年では男性が多く、中年以降では女性が多い結果になっています。特に若年男性のNASHはファーストフードとの関連が推測されています。

肝硬変、肝臓癌については肝硬変は女性が多く、肝癌は男性がやや多い結果になっています。
通常のウイルス肝炎では、男性の頻度が圧倒的に多いのとは対照的な成績です。

2011年6月12日日曜日

糖質制限の重要性

長寿遺伝子サーチュインを発現させるのはカロリー制限であることは昨日のブログで紹介しましたが、日本人のカロリーオーバーの原因は何でしょうか?
日本人の摂取エネルギーの60%が炭水化物すなわち糖質です。
糖質を貯める場所は肝臓と筋肉のみしかなく、貯めることのできる量は肝臓が50~80g、筋肉が200~300gのみです。行き場を失った糖質が向かう先は脂肪組織で、脂肪組織は何kgでも貯えることができます。
糖質の脂肪組織の取り込みにはインスリンが重要な役割を果たします。すなわち、血糖値が上昇するとインスリンが多く分泌されます。肝臓や筋肉に貯えられず、運動でも消費されずに行き場を失った糖質が、大量に分泌されたインスリンによって、脂肪組織に移行するのです。
したがって、食後におこる高血糖は脂肪代謝の面からは望ましくないと言えます。

長寿遺伝子サーチュイン

NHKスペシャル「寿命は延ばせる」(6月12日)で長寿遺伝子、サーチュインが紹介されていました。
番組で紹介されていたアカゲザルの実験はあまりにも有名で、摂取カロリーを30%減らした群が長生きであったという結果ですが、長寿遺伝子サーチュインがカロリー制限群で発現が強かったことが分かり、長寿遺伝子の面からもカロリー制限の有効性が証明された形になりました。

それにしても、サーチュイン遺伝子の発現を最も増強させるのがカロリー制限だったというのは少し拍子抜けだったですね。
カロリー制限は誰でもできる治療法ですが、「言うは易く行うは難し」の諺通り、長期間実施し続けるのは困難です。
これを実現させることができる仕掛けを作ることが出来たら最高ですね。