2011年8月24日水曜日

健診「所見あり」増加中

岡山労働局の調査によると、岡山県の労働者の健康診断有所見率が全国平均を上回って増加していることが8月22日付の山陽新聞に掲載されていました。
異常の内訳は、血中脂質36.2%、肝機能17.6%、血圧16.9%、血糖14.1%と生活習慣病関連が多くなっています。
不規則な勤務体系になりがちな業種での有所見率が高いことに加え、岡山県ではマイカー通勤者が多いことから運動不足になり異常が増えていると分析されていました。
家庭で手軽に出来る運動プログラムの必要性が感じられます。

2011年8月5日金曜日

健康増進のためポテチやハンバーガーへの課税を検討(韓国)

韓国では、保健福祉部の傘下にある保健医療未来委員会が7月6日に、「酒、炭酸飲料、スナック菓子などカロリーが高いにもかかわらず栄養はないジャンクフードに健康増進負担金を賦課することを検討している」と発表したそうです。
さらに、清涼飲料水の自動販売機の小学校への設置を禁止する、ファーストフードの広告をテレビで放映する時間帯を規制する、という方案も検討しているそうです。
しかしながら、その報道に対しては各方面からクレームがあがっています。
市民団体の一つ、経済正義実践連合は、健康増進負担金の導入に反対して、「政府は、罪悪税(酒、たばこ、ギャンブル、競馬など社会にマイナスの影響を与えるとみられることに課す税金)の適用を拡大して税収を増やそうとしている。これは財政赤字の責任を国民に転嫁することにほかならない。庶民の負担を重くするだけ」「物価が高騰し庶民の暮らしは苦しくなっている。健康保険の財政悪化を根本的に解決することなく、税金で補てんしようとするのは納得し難い」というコメントを出しています。
(日経ビジネス8月1日の記事より http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20110801/221815/

医師の立場から見たら、ジャンクフードは明らかに病気につながる食べ物であって、医療費を増大させるだけだと思います。
こういった対策で摂取量が減ることは医療費の節約だけでなく、国民の健康を保つという面からも望ましいことだと思います。
自分たちが好きなものについては、その負の部分をしっかり見ることができないのですね。
おそらく、日本でも同じ議論をしたら主婦の猛烈な反発を食らうことになるでしょう。
最終的には、ジャンクフードを食べ続けて病気になった人が後で後悔することになるのですが、聞く耳を持っていただけないのが残念です。

2011年7月14日木曜日

世界一受けたい授業 痩せていても危ない!日本人を蝕む第3の脂肪 2011年7月9日

7月9日放映の「世界一受けたい授業」で東京医科歯科大の小川佳宏先生が「痩せていても危ない!日本人を蝕む第3の脂肪」というタイトルで講義をされました。

脂肪には①皮下脂肪、②内臓脂肪、③第3の脂肪の3種類があります。

皮下脂肪:お腹などでつまむことができ、筋肉の外側にある脂肪
内臓脂肪:大腸や小腸のまわりについている脂肪、内臓脂肪が多いとお腹がぷくっと出てきます
第3の脂肪:皮下脂肪、内臓脂肪ともにこれ以上蓄積できなくなると、脂肪が肝臓・筋肉・血管などに蓄積していきます。別名、「異所性脂肪」とも言われます。

肝臓に脂肪が溜まると脂肪肝になり、一部は非アルコール性脂肪肝炎(NASH)という病気になってしまいます。NASHを放置すると肝硬変や肝臓癌にまで進行します。先日の「ためしてガッテン」でも紹介されていました
http://kan-kanzou.blogspot.com/2011/07/blog-post_01.html

第3の脂肪の予防法
第3の脂肪は3つの脂肪の中で一番減りやすい脂肪です。
関連記事:NHKためしてガッテン「決定版!こんな簡単にやせちゃいましたダイエットSP」
  http://kan-kanzou.blogspot.com/2011_01_01_archive.html

厚生労働省が定めた体内の脂肪を減らすための運動量を示す数値メッツ(METs=metabolic equivalents)で見ると、それぞれの運動を1時間した時に獲得できるメッツは次の通りですが、異所性脂肪を予防するには1週間23METs・時間の運動が必要とされています。


2011年7月7日木曜日

講演会「C型肝炎治療の進歩(名古屋市大 田中靖人先生)

7月5日に、講演会「C型肝炎治療の進歩-ガイドラインから個別化治療へ-(名古屋市大 田中靖人先生)を聞いてきました。

田中先生は、C型肝炎に対するペグインターフェロン+リバビリン併用療法の宿主側の効果予測因子としてIL-28Bを発見された方です。
ちょうど1年前の肝臓学会誌に「座談会 C型肝炎ウイルス感染と宿主因子:特にIL28Bについて」が掲載されていますが、今回は秋にも保険適応が予想されている新規の抗ウイルス剤テラプレビルによる3剤併用療法を意識した講演内容になっていました。肝臓学会誌の内容は http://www.jstage.jst.go.jp/article/kanzo/51/7/51_327/_article/-char/ja から閲覧できます。

IL-28BはIFN-λファミリーで従来から肝炎の治療に使われていたIFN-αやβとは別の経路で抗ウイルス作用を発揮していること、水平感染における自然排除に関連していること、さらには肝臓だけでなく免疫細胞にも発現しており、両者がきちんと働かないとHCVが排除できない(これは移植例での抗ウイルス療法を行うときに重要になってきます)ことが分かってきました。

テラプレビルはHCVのプロテアーゼを阻害する薬で、従来のペグインターフェロン+リバビリン併用療法に併用することで、1型、高ウイルス量の症例のウイルス消失率を50%から70%に高めることができます。一方で、治療効果が十分に得られない場合は薬剤耐性を起こす確率が高く、今後、臨床応用される他のプロテアーゼ阻害剤の効果を落とす可能性があります。

ここでIL-28Bとコア変異の両者の測定が効果予測因子として重要になって来ます。
IL-28Bがmajor homoであれば約90%の著効率になり、積極的な適応になります。
IL-28Bがminorの場合は、コアがwildの場合、62.5%の著効率であるのに対し、mutantの場合は14.3%と極端に著効率が落ちるので、IL-28Bがminorかつコアがmutantである場合は新規の抗ウイルス剤を待つか、IFN少量長期投与などで抗炎症療法を行うべきとの話でした。

2011年7月1日金曜日

「肝臓の健康を守れSP」 NHKためしてガッテン6月29日放送

脂肪肝が肝硬変、肝臓癌に進行する(済生会吹田病院 岡上武先生)

番組では、脂肪肝の中に肝硬変、肝臓癌に進行する可能性のある非アルコール性脂肪肝炎(NASH)があり、実際に20年以上の経過で肝臓癌を発病した症例が紹介されていました。
NASHは、当初は著明な脂肪化を認めますが、肝硬変、肝臓癌と進行するうちに脂肪が消失し、NASHの存在が診断できなくなることがあります(burn out NASH)
現在、日本には1000万人の脂肪肝患者がおり、そのうち2割がNASHである可能性があるとのことです。
脂肪肝といって甘く見てはいけないことを最後に岡上先生が強調されていました。


脂肪肝の治療の新知見(高知大 西原利治先生)

脂肪を燃やすためには、ぐっすり眠ることが大切。これは、眠っている間は糖をエネルギーとして必要とする脳が活動を止めて、脂肪をエネルギーとする心臓のみが活動しているために、エネルギー工場である肝臓は脂肪を分解してエネルギーを作るためです。
夜更かしをすることは、脂肪が燃えにくいことになり、脂肪肝治療にとっては望ましくないことも分かりました。


鉄過剰にご用心(三重大学 岩田加壽子先生)

C型肝炎やNASHの患者さんで、肝細胞内で鉄過剰状態になると、その鉄が酸化して、肝臓に炎症を起こします。
肝臓によいといわれる「ウコン」の一部に鉄を過剰に含んだものがあります。鉄過剰をみる私評に「フェリチン値」があります。フェリチン値が上昇している場合は要注意です。
治療には鉄制限食(1日6mg以下)がありますが、効果が不十分な場合には瀉血を行います。

2011年6月24日金曜日

歯周病が糖尿病や動脈硬化を悪化させる

6月22日放送のNHKためしてガッテン「緊急警報 免疫力を低下させ突然死を招く感染症が全国まん延中」で、歯周病菌が糖尿病や動脈硬化を悪化させる原因になっていることが紹介されました。

歯ぐきで歯周病菌が繁殖すると、体の免疫細胞が歯周病菌と戦うために集まってきます。歯周病菌をやっつけるために免疫細胞のマクロファージが仲間を呼ぶためにある物質(TNF-α)を放出しますが、この物質は一方で血液中のインスリンの働きを低下させ、糖尿病を悪化させます。番組ではインスリンの働きを阻害することから「阻害君」と呼ばれていました。

歯周病菌は歯ぐきから血管の中に入って、血液に含まれる血小板の中に入って血管の中を移動します。さらに菌から出る毒は、血小板や赤血球を集めて塊にしてしまう事が実験でわかりました。これが血管を詰める動脈硬化巣になっていきます。

歯周病のことを軽く見てはいけない。しっかりとケアをしていかなければと思いました。

2011年6月16日木曜日

脂肪性肝炎(NASH)における性差

脂肪性肝炎(NASH)の頻度は年齢別、性別でかなりの違いがあります。
それについて東京女子医大の橋本先生が論文にされています。
   (J Gastroenterology 46(suppl1) 63-69, 2011)



脂肪肝全体の頻度は男性では30歳以降で25%を超えています。女性では閉経後の50歳以降での脂肪肝の頻度が20%前後になります。これらの成績から、健診を受ける中年以降の方は大体2割ぐらいが脂肪肝であるという認識を持っておく必要があります。


脂肪性肝炎については、若年では男性が多く、中年以降では女性が多い結果になっています。特に若年男性のNASHはファーストフードとの関連が推測されています。

肝硬変、肝臓癌については肝硬変は女性が多く、肝癌は男性がやや多い結果になっています。
通常のウイルス肝炎では、男性の頻度が圧倒的に多いのとは対照的な成績です。