2011年10月27日木曜日

主な炭水化物食品のカロリー

炭水化物主体の食品のカロリーを図にしてみました。
思った以上にカロリーがある食品があります。
食パンはこれにバターやジャムを塗るので、さらにカロリーが高くなり要注意です。

2011年10月25日火曜日

メタボの生活指導は食事・運動両方の同時指導が重要

筑波大の中田由夫先生らのグループは、メタボ症例に対する生活介入において食事・運動の両方を指導した群で高い治療効果が得られたことを報告されています。
具体的な指導内容は、1日の食事摂取量が、男性1600kcal、女性1200kcal、運動は毎日30分で週1000-1500kcalです。
指導は集団指導形式で行い、仲間意識を持たせることで、脱落率が食事療法のみ2.5%、食事+運動療法で5.4%ときわめて低いのが特徴です。

2011年10月7日金曜日

鉄代謝は肝臓病治療の要

三重大学、藤田尚己先生の「鉄代謝は肝臓病治療の要」という講演を拝聴しました。主にC型肝炎の鉄過剰と瀉血のお話でしたが、鉄代謝に関わるホルモンであるhepcidinの意義がよくわかりました。
hepcidinは消化管からの鉄の吸収を抑える役目があり(下図)、鉄過剰になると血中濃度が上がるのですが、C型肝炎ではferritin値に比してhepcidinの濃度が十分上昇していないことが分かりました。さらに、hepcidinの産生にはSmad4という細胞内シグナル伝達物質が必要ですが、その遺伝子レベルがC型肝炎患者の肝臓では低下していること、さらに、Smad4の働きを抑制するSmad6,7の遺伝子発現は逆に亢進していること、IFN治療でHCVが排除されるとhepcidinの血中濃度(正確にはhepcidin/ferritin比)が正常に戻ることが分かりました。
以上の成績から、HCV自体が細胞内で遺伝子レベルでhepcidin産生に関わっており、そのことが鉄過剰に繋がっている可能性が説明されました。
実地臨床では、瀉血を開始するferritin値の絶対値はなく、50-60ng/mlであっても、瀉血で10ng/ml以下にするとALTが改善する症例もあることが紹介されていました。


                        図はAdvances in Hematology vol.2010より引用

自己免疫性肝炎と原発性胆汁性肝硬変のオーバーラップについて

先日、東京慈恵医大の銭谷幹男先生の自己免疫性肝炎と原発性胆汁性肝硬変のオーバーラップについての講演を聞く機会がありました。
1999年の国際診断基準では自己免疫性肝炎の定義を厳密にするスタンスであったために、ステロイド治療が必要な自己免疫性肝疾患が認識されず、治療が遅れるデメリットが生じました。2008年の国際診断基準はステロイド治療が必要な自己免疫性疾患を認識することを主眼に作られています。
 
狭義の自己免疫性肝炎(AIH)と原発性胆汁性肝硬変(PBC)の間には、3つの疾患概念が存在することになりますが、今まで提唱されてきたoverlap症候群は厳密に定義すると非常に症例数が少なくなり、今後はoverlapという用語は使用しない方向になると考えられます。
実際の臨床の場では、症例数の多さからPBC寄りの症例(肝炎半強いPBC)が多数を占めることになると思われます。

2011年9月25日日曜日

糖尿病の食事療法において食物繊維は糖分の吸収を抑える効果があることが報告されています。
野菜サラダを先に食べることで血糖の上昇を抑える論文を見つけたので紹介します。
食事療法のみでコントロール中の糖尿病患者さんを対象に、米飯150g(252kcal)および野菜サラダ(キャベツ60g+トマト30g、食物繊維1.4g、88kcal)を順番を変えて摂取した時の血糖およびインスリンの変化を検討したところ、野菜サラダを先に食べた方が血糖値およびインスリンの上昇が抑えられていることが分かりました。
とかく、食べ物のカロリーに注意が向いてしまいますが、食材にも注意することが重要なことを示してくれた成績です。

2011年9月13日火曜日

ALTが31以上になると糖尿病・心血管疾患による死亡リスクが高まる

韓国で行われた健診受診者(ウイルス肝炎、アルコール性肝炎を除く)を対象にしたコーホート研究で、ALTが31以上の群で、糖尿病・心血管疾患による死亡リスクが高まることが分かりました .
ALTが15以下の完全に正常な群と比べると、死亡リスクが2.28倍に高まることが分かりました。
ALT上昇の大半が脂肪肝によるものと考えられ、ALTが上昇している脂肪肝患者については積極的な生活介入が必要と考えます (Atherosclerosis. 2009;205:533-7)


2011年8月24日水曜日

健診「所見あり」増加中

岡山労働局の調査によると、岡山県の労働者の健康診断有所見率が全国平均を上回って増加していることが8月22日付の山陽新聞に掲載されていました。
異常の内訳は、血中脂質36.2%、肝機能17.6%、血圧16.9%、血糖14.1%と生活習慣病関連が多くなっています。
不規則な勤務体系になりがちな業種での有所見率が高いことに加え、岡山県ではマイカー通勤者が多いことから運動不足になり異常が増えていると分析されていました。
家庭で手軽に出来る運動プログラムの必要性が感じられます。

2011年8月5日金曜日

健康増進のためポテチやハンバーガーへの課税を検討(韓国)

韓国では、保健福祉部の傘下にある保健医療未来委員会が7月6日に、「酒、炭酸飲料、スナック菓子などカロリーが高いにもかかわらず栄養はないジャンクフードに健康増進負担金を賦課することを検討している」と発表したそうです。
さらに、清涼飲料水の自動販売機の小学校への設置を禁止する、ファーストフードの広告をテレビで放映する時間帯を規制する、という方案も検討しているそうです。
しかしながら、その報道に対しては各方面からクレームがあがっています。
市民団体の一つ、経済正義実践連合は、健康増進負担金の導入に反対して、「政府は、罪悪税(酒、たばこ、ギャンブル、競馬など社会にマイナスの影響を与えるとみられることに課す税金)の適用を拡大して税収を増やそうとしている。これは財政赤字の責任を国民に転嫁することにほかならない。庶民の負担を重くするだけ」「物価が高騰し庶民の暮らしは苦しくなっている。健康保険の財政悪化を根本的に解決することなく、税金で補てんしようとするのは納得し難い」というコメントを出しています。
(日経ビジネス8月1日の記事より http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20110801/221815/

医師の立場から見たら、ジャンクフードは明らかに病気につながる食べ物であって、医療費を増大させるだけだと思います。
こういった対策で摂取量が減ることは医療費の節約だけでなく、国民の健康を保つという面からも望ましいことだと思います。
自分たちが好きなものについては、その負の部分をしっかり見ることができないのですね。
おそらく、日本でも同じ議論をしたら主婦の猛烈な反発を食らうことになるでしょう。
最終的には、ジャンクフードを食べ続けて病気になった人が後で後悔することになるのですが、聞く耳を持っていただけないのが残念です。

2011年7月14日木曜日

世界一受けたい授業 痩せていても危ない!日本人を蝕む第3の脂肪 2011年7月9日

7月9日放映の「世界一受けたい授業」で東京医科歯科大の小川佳宏先生が「痩せていても危ない!日本人を蝕む第3の脂肪」というタイトルで講義をされました。

脂肪には①皮下脂肪、②内臓脂肪、③第3の脂肪の3種類があります。

皮下脂肪:お腹などでつまむことができ、筋肉の外側にある脂肪
内臓脂肪:大腸や小腸のまわりについている脂肪、内臓脂肪が多いとお腹がぷくっと出てきます
第3の脂肪:皮下脂肪、内臓脂肪ともにこれ以上蓄積できなくなると、脂肪が肝臓・筋肉・血管などに蓄積していきます。別名、「異所性脂肪」とも言われます。

肝臓に脂肪が溜まると脂肪肝になり、一部は非アルコール性脂肪肝炎(NASH)という病気になってしまいます。NASHを放置すると肝硬変や肝臓癌にまで進行します。先日の「ためしてガッテン」でも紹介されていました
http://kan-kanzou.blogspot.com/2011/07/blog-post_01.html

第3の脂肪の予防法
第3の脂肪は3つの脂肪の中で一番減りやすい脂肪です。
関連記事:NHKためしてガッテン「決定版!こんな簡単にやせちゃいましたダイエットSP」
  http://kan-kanzou.blogspot.com/2011_01_01_archive.html

厚生労働省が定めた体内の脂肪を減らすための運動量を示す数値メッツ(METs=metabolic equivalents)で見ると、それぞれの運動を1時間した時に獲得できるメッツは次の通りですが、異所性脂肪を予防するには1週間23METs・時間の運動が必要とされています。


2011年7月7日木曜日

講演会「C型肝炎治療の進歩(名古屋市大 田中靖人先生)

7月5日に、講演会「C型肝炎治療の進歩-ガイドラインから個別化治療へ-(名古屋市大 田中靖人先生)を聞いてきました。

田中先生は、C型肝炎に対するペグインターフェロン+リバビリン併用療法の宿主側の効果予測因子としてIL-28Bを発見された方です。
ちょうど1年前の肝臓学会誌に「座談会 C型肝炎ウイルス感染と宿主因子:特にIL28Bについて」が掲載されていますが、今回は秋にも保険適応が予想されている新規の抗ウイルス剤テラプレビルによる3剤併用療法を意識した講演内容になっていました。肝臓学会誌の内容は http://www.jstage.jst.go.jp/article/kanzo/51/7/51_327/_article/-char/ja から閲覧できます。

IL-28BはIFN-λファミリーで従来から肝炎の治療に使われていたIFN-αやβとは別の経路で抗ウイルス作用を発揮していること、水平感染における自然排除に関連していること、さらには肝臓だけでなく免疫細胞にも発現しており、両者がきちんと働かないとHCVが排除できない(これは移植例での抗ウイルス療法を行うときに重要になってきます)ことが分かってきました。

テラプレビルはHCVのプロテアーゼを阻害する薬で、従来のペグインターフェロン+リバビリン併用療法に併用することで、1型、高ウイルス量の症例のウイルス消失率を50%から70%に高めることができます。一方で、治療効果が十分に得られない場合は薬剤耐性を起こす確率が高く、今後、臨床応用される他のプロテアーゼ阻害剤の効果を落とす可能性があります。

ここでIL-28Bとコア変異の両者の測定が効果予測因子として重要になって来ます。
IL-28Bがmajor homoであれば約90%の著効率になり、積極的な適応になります。
IL-28Bがminorの場合は、コアがwildの場合、62.5%の著効率であるのに対し、mutantの場合は14.3%と極端に著効率が落ちるので、IL-28Bがminorかつコアがmutantである場合は新規の抗ウイルス剤を待つか、IFN少量長期投与などで抗炎症療法を行うべきとの話でした。

2011年7月1日金曜日

「肝臓の健康を守れSP」 NHKためしてガッテン6月29日放送

脂肪肝が肝硬変、肝臓癌に進行する(済生会吹田病院 岡上武先生)

番組では、脂肪肝の中に肝硬変、肝臓癌に進行する可能性のある非アルコール性脂肪肝炎(NASH)があり、実際に20年以上の経過で肝臓癌を発病した症例が紹介されていました。
NASHは、当初は著明な脂肪化を認めますが、肝硬変、肝臓癌と進行するうちに脂肪が消失し、NASHの存在が診断できなくなることがあります(burn out NASH)
現在、日本には1000万人の脂肪肝患者がおり、そのうち2割がNASHである可能性があるとのことです。
脂肪肝といって甘く見てはいけないことを最後に岡上先生が強調されていました。


脂肪肝の治療の新知見(高知大 西原利治先生)

脂肪を燃やすためには、ぐっすり眠ることが大切。これは、眠っている間は糖をエネルギーとして必要とする脳が活動を止めて、脂肪をエネルギーとする心臓のみが活動しているために、エネルギー工場である肝臓は脂肪を分解してエネルギーを作るためです。
夜更かしをすることは、脂肪が燃えにくいことになり、脂肪肝治療にとっては望ましくないことも分かりました。


鉄過剰にご用心(三重大学 岩田加壽子先生)

C型肝炎やNASHの患者さんで、肝細胞内で鉄過剰状態になると、その鉄が酸化して、肝臓に炎症を起こします。
肝臓によいといわれる「ウコン」の一部に鉄を過剰に含んだものがあります。鉄過剰をみる私評に「フェリチン値」があります。フェリチン値が上昇している場合は要注意です。
治療には鉄制限食(1日6mg以下)がありますが、効果が不十分な場合には瀉血を行います。

2011年6月24日金曜日

歯周病が糖尿病や動脈硬化を悪化させる

6月22日放送のNHKためしてガッテン「緊急警報 免疫力を低下させ突然死を招く感染症が全国まん延中」で、歯周病菌が糖尿病や動脈硬化を悪化させる原因になっていることが紹介されました。

歯ぐきで歯周病菌が繁殖すると、体の免疫細胞が歯周病菌と戦うために集まってきます。歯周病菌をやっつけるために免疫細胞のマクロファージが仲間を呼ぶためにある物質(TNF-α)を放出しますが、この物質は一方で血液中のインスリンの働きを低下させ、糖尿病を悪化させます。番組ではインスリンの働きを阻害することから「阻害君」と呼ばれていました。

歯周病菌は歯ぐきから血管の中に入って、血液に含まれる血小板の中に入って血管の中を移動します。さらに菌から出る毒は、血小板や赤血球を集めて塊にしてしまう事が実験でわかりました。これが血管を詰める動脈硬化巣になっていきます。

歯周病のことを軽く見てはいけない。しっかりとケアをしていかなければと思いました。

2011年6月16日木曜日

脂肪性肝炎(NASH)における性差

脂肪性肝炎(NASH)の頻度は年齢別、性別でかなりの違いがあります。
それについて東京女子医大の橋本先生が論文にされています。
   (J Gastroenterology 46(suppl1) 63-69, 2011)



脂肪肝全体の頻度は男性では30歳以降で25%を超えています。女性では閉経後の50歳以降での脂肪肝の頻度が20%前後になります。これらの成績から、健診を受ける中年以降の方は大体2割ぐらいが脂肪肝であるという認識を持っておく必要があります。


脂肪性肝炎については、若年では男性が多く、中年以降では女性が多い結果になっています。特に若年男性のNASHはファーストフードとの関連が推測されています。

肝硬変、肝臓癌については肝硬変は女性が多く、肝癌は男性がやや多い結果になっています。
通常のウイルス肝炎では、男性の頻度が圧倒的に多いのとは対照的な成績です。

2011年6月12日日曜日

糖質制限の重要性

長寿遺伝子サーチュインを発現させるのはカロリー制限であることは昨日のブログで紹介しましたが、日本人のカロリーオーバーの原因は何でしょうか?
日本人の摂取エネルギーの60%が炭水化物すなわち糖質です。
糖質を貯める場所は肝臓と筋肉のみしかなく、貯めることのできる量は肝臓が50~80g、筋肉が200~300gのみです。行き場を失った糖質が向かう先は脂肪組織で、脂肪組織は何kgでも貯えることができます。
糖質の脂肪組織の取り込みにはインスリンが重要な役割を果たします。すなわち、血糖値が上昇するとインスリンが多く分泌されます。肝臓や筋肉に貯えられず、運動でも消費されずに行き場を失った糖質が、大量に分泌されたインスリンによって、脂肪組織に移行するのです。
したがって、食後におこる高血糖は脂肪代謝の面からは望ましくないと言えます。

長寿遺伝子サーチュイン

NHKスペシャル「寿命は延ばせる」(6月12日)で長寿遺伝子、サーチュインが紹介されていました。
番組で紹介されていたアカゲザルの実験はあまりにも有名で、摂取カロリーを30%減らした群が長生きであったという結果ですが、長寿遺伝子サーチュインがカロリー制限群で発現が強かったことが分かり、長寿遺伝子の面からもカロリー制限の有効性が証明された形になりました。

それにしても、サーチュイン遺伝子の発現を最も増強させるのがカロリー制限だったというのは少し拍子抜けだったですね。
カロリー制限は誰でもできる治療法ですが、「言うは易く行うは難し」の諺通り、長期間実施し続けるのは困難です。
これを実現させることができる仕掛けを作ることが出来たら最高ですね。

2011年6月10日金曜日

メタボリックドミノ

最近、メタボリックドミノという概念が提唱されています(慶応大学内科、伊藤裕先生)

メタボリック症候群は複数の異常(食後高血糖、高血圧、脂質異常症)が同時多発性に進行していってさまざまな病気を起こす状態で、ドミノ倒しによく似ています。
初期の段階であれば、倒れるコマ(病気)も少なくて、進行を抑えることも可能ですが、ある程度病気が増えてからの進行予防はきわめて困難です。
伊藤先生は早期の段階での治療を提唱されています。

図の中で、脂肪肝はメタボ状態になってからの病気と位置付けられていますが、実際に健診で発見される脂肪肝の患者さんは、メタボリック症候群の基準を満たさない方も多くいらっしゃいます。

最近の健診のデータを見ても、超音波検査で受診者の2割以上に脂肪肝を認めており、初期から脂肪肝になっている方が多いと思われます。
メタボリックドミノで「脂肪肝」とされているのは肝硬変・肝臓癌に進行する可能性を持った「脂肪性肝炎」に相当するのではないかと思います。
個人的には、「脂肪肝」は図の上流の肥満とインスリン抵抗性のあたりに位置付けることができると思います。

健診で脂肪肝と診断されたら、将来的にはメタボリックドミノに進むと認識して、生活習慣の改善に取り組むことが重要と思います。
実際に、メタボ状態とそうでない脂肪肝の患者さんを比較すると、生活指導の反応性がかなり異なっています。メタボのない患者さんの方が、痩せやすく、血液検査値も改善しやすい傾向になっています。
メタボ状態の患者さんは平均年齢が高く、筋肉量も低下しています。

筋肉は「かまど」のようなもので、食物のエネルギーを燃やす臓器であることを以前のブログで紹介しました。

筋肉をつけないと痩せられない(クロワッサン2011年6月10日号)

メタボリック症候群が進行した人は「かまど」が小さく、食べたものが燃えにくく、余ったエネルギーは脂肪として蓄積しやすいと言えます。
こういった悪循環を断ち切るためにも、早期の段階での生活指導が望ましいと言えます。

動脈硬化の新たな危険因子が発見されました(超悪玉コレステロール)

以前のブログで、体内に過剰な糖分が存在するとタンパク質と反応して老化物質であるAGE (advanced glycation endproducts) が産生されて動脈硬化を促進されることを紹介しました。


過剰な糖分は悪玉コレステロールであるLDL-コレステロールと反応して、“超悪玉”コレステロールができることが分かりました(Diabetes 2011.5.26電子版)
この超悪玉コレステロールは血管壁に粘着性が特別に高いコレステロールで、通常のLDLとは違う機序で動脈の血管壁に付着して脂肪プラークを形成しやすく、これが心疾患や脳卒中につながるとのことです。


他のブログで、動脈硬化の危険因子がLDL-コレステロールのみでなく、他の因子を探索する研究R3i(Residual Risk Reduction Initiative)がスタートしていることを紹介しましたが、今回の超悪玉コレステロールの発見は、メタボ患者における動脈硬化予防を一歩進めるものと思います。
いずれにしても、高血糖が悪循環の出発点であることは間違いなく、高血糖を予防する治療の重要性が改めて認識されました。

関連ブログ
老化におけるAGE (advanced glycation endproducts) の重要性
動脈硬化の危険因子はLDLコレステロールのみか? R3iの取り組み

2011年6月9日木曜日

食欲をコントロールできる技 (NHKためしてガッテン 6月8日放送)

野生の動物に食べ物をどれだけ与えても、満腹中枢が働いて必要以上に食べ過ぎることはありません。

人間が食べ過ぎる原因には以下のようなものがあります。                          
①香り ②アルコール ③見た目 ④グルメ情報 ⑤甘み ⑥ダシ ⑦油脂 ⑧ストレス ⑨睡眠不足

番組では、糖分や油脂で食べ物に味付けをすると、通常は満腹中枢がきっちり働いている動物ですら食欲が出て余分に食べてしまう実例が示されていました。
私たちの食生活はこういった誘惑の罠だらけということになります。

しかしながら、その誘惑に打ち勝つ方法が、最近の研究で分かってきました。
その物質は脳内ヒスタミンで、ヒスタミンが食欲を抑えること、風邪薬に含まれる抗ヒスタミン剤はその作用を打ち消すことなどが分かってきました。
脳には血液脳関門という関所があり、ヒスタミンは血管から脳に入ることはできませんので、脳内での産生を高める工夫が必要です。

脳内でのヒスタミン産生を増やすためには、噛むことが有効なことが分かりました。
最も有効な噛み方として、一口を30回噛んで飲み込む食べ方が紹介されていました。

さらに脳内ヒスタミンは、脳内で食欲を抑制するとともに、交感神経を介してお腹の内臓脂肪の分解を促進する作用もあるそうです。

薬を使わずに生活習慣を改めることで思わぬ効果が得られることが分かり、まさに「ガッテン」でした。

2011年6月5日日曜日

筋肉をつけないと痩せられない(クロワッサン2011年6月10日号)

宮崎義憲(東京学芸大)
 筋肉はかまどのようなもの。運動してエネルギーを使うとき、かまどが少ないと限界があるが、かまどがいっぱいあると効率的にエネルギーを燃やすことができる。
無酸素運動の筋トレで筋肉を増やすと、有酸素運動がうんと楽に感じる。
 筋肉をつけることのメリットに体型の引き締め効果が挙げられる。大胸筋を鍛えればバストアップ、大殿筋を鍛えればヒップアップになる。
 腹筋の筋力アップで猫背も予防できる。人間の上半身は御用提灯のようなもので、肋骨の上に頭が乗って腕がぶら下がっている、ものすごく重い提灯。お腹の無きには腹圧という風船が入っていて胸郭を持ち上げている。横隔膜や腹筋がピンと張って風船が膨らんでいれば問題ないが、腹筋が衰えて風船がしぼむと猫背になる。
 「3」がキーワード、3分間で無酸素運動が有酸素運動になる、皮下脂肪が燃えるまで3週間待つ、運動は三日坊主でも良い(時々休んで疲労を蓄積しない)




石川沙樹(バレトン・トレーナー)
フィットネス、バレエ、ヨガの3つの動きが融合されたバレトンが注目されている。
筋トレと有酸素運動が効率よくできてダイエット効果が高い
120分のトレーニングで効果あり。
You Tubeの動画 http://www.youtube.com/watch?v=AyiEqPuXI4c

フィットネス:身体に負担をかけずに筋トレができる
バレエ:美しいボディラインを作る、
ヨガ:凝り固まった筋肉をほぐす



 

2011年6月2日木曜日

ロコモの運動療法

ロコモーティブ症候群の運動処方,トレーニング(ロコトレ)の考え方

●高齢者の訴えとして関節の痛みや可動域制限は多い,また,歩行形態が独歩から杖歩行などへと低下する人には,下肢筋力が弱い,片脚立ち時間が短いという特徴がある。
身体を持ち上げる動作は,日常では椅子から立ち上がる動作,階段を上る動作などに相当し生活の基本である。日常生活をスムーズに行うには立ち上がるための下肢筋力が重要。日常生活を十分に送るには片脚で体重の約60%を持ちあげるだけの下肢筋力が必要。
●バランスカの低下は転倒しやすさの原因で,転倒しやすい人とそうでない人では開眼片脚起立時間(バランスカの低下を評価する一般的な方法)に差がある。
●これらのことから、ロコモの予防,治療の基本となるトレーニングとして,「片脚起立訓jと「スクワット」を「ロコモーショントレーニング(ロコトレ)」として勧めている。片脚起立訓練はリスクの高い高齢者に対する転倒と大腿骨頚部骨折の予防法として提唱されたもので、主にバランス能力の訓練を目指している.スクワットは足腰の筋力訓練の代表的なものである。


ロコトレの実際(整形外科学会のパンフレットより引用)



関連ブログ
ロコモティブ症候群

2011年5月30日月曜日

老化におけるAGE (advanced glycation endproducts) の重要性

5月19日放送の「ためしてガッテン」で、老化に深く関係したAGE (advanced glycation endproducts) が紹介されていました。
AGEはタンパク質が過剰な糖と時間をかけて反応することで生成されます。
AGEはいろいろな臓器に蓄積することで、①皮膚の衰え、②骨のもろさ、③眼の水晶体の濁り、④動脈硬化などを引き起こします。

以前のブログで、高脂血症の薬で悪玉コレステロール(LDL)を下げても、動脈硬化は100%予防できないことを紹介しましたが、この高血糖→AGE生成の経路が関わっている可能性があります。

高血糖を予防する食事療法として、食事の最初に多くの野菜を摂ることが推奨されていました。
これは、野菜で満腹になって、余計なご飯を食べないという効果に加え、食物繊維で糖の吸収が遅れて、血糖値の上昇がゆるやかになることで食後の空腹感が強くならないことがあげられていました。

キング・カズ(三浦知良)の食事

サッカー、日本代表、長谷部誠の「心を整える」を読みました。キング・カズ(三浦知良)と一緒に食事をした一節がありますが、その中で、彼のメニュー選びを紹介しています。

「カズさんがキングたる所以は,メニュー選びの時に感じさせられた。野菜をたっぷり注文し,炭水化物はほとんど頼まない。試合の前はエネルギー元となる炭水化物を摂った方がいいけれど,普段は余計な脂肪がついてしまうからだ。やっぱりキングは違うと驚かされた。当然デザートも食べない」

三浦知良氏は今年44歳を迎えましたが、いまだに現役です。
炭水化物を筋肉を使う試合以外の日には極力摂らないようにして体型を維持しているということは、同年代で運動をほとんどしていない男性は炭水化物(ご飯、麺類、パン)をかなり制限しないといけないことになります。
また、野菜を沢山摂ることの効用については、5月18日に放送された「ためしてガッテン」でも紹介されていました。これについては、別の日に紹介したいと思います。

2011年5月27日金曜日

ロコモティブ症候群の原因としての筋力低下

ロコモティブ症候群は運動器の障害によって、日常生活に支障を来す病態です。

ここで言われている運動器には
支持機構の中心となる骨
②支持機構の中の動く部分である関節軟骨,脊椎の椎間板
③実際に動かす筋肉,神経系
があります。

特に筋肉の役割は重要です。
筋肉の作用には関節を動かす作用だけでなく,桔抗筋との同時収縮により,下肢運動の減速,関節への安定性の付与,衝撃吸収作用があります。

関連ブログ
ロコモティブ症候群

2011年5月26日木曜日

循環障害による肝障害④ うっ血肝

慢性うっ血肝では胆汁うっ滞型肝障害を呈することを紹介しましたが、透析患者で除水不足で水余りになった患者さんで胆汁うっ滞型肝障害を認めました。除水してdry weightを下げることで、検査値は改善しました。


文献的には心臓移植前後の肝機能を比較したものがあり、うっ血の改善とともにALP、γGTPが改善することが報告されています(Transpl Int. 2005; 18: 697-702)

2011年5月25日水曜日

ロコモティブ症候群

メタボリック症候群(メタボ)は市民権を得ましたが、整形外科領域からロコモティブ症候群(ロコモ)が提唱され、最近はテレビなどで少しずつ紹介されるようになっています。

ロコモティブ症候群は、運動器の障害による要介護の状態や要介護リスクの高い状態を表す新しい言葉で、和文は「運動器症候群」です。
ロコモティブ(Locomotive)は「運動の」の意味で、機関車という意味もあり、能動的な意味合いを持つ言葉です。


整形外科学会は自分で気付くためのツールとして「ロコチェック(ロコモーションチェック)」と、ロコモ対策としての運動「ロコトレ(ロコモーショントレーニング)」を作成しています。
整形外科学会HP内からパンフレットがダウンロードできます。
http://www.joa.or.jp/jp/public/locomo/locomo_pamphlet.pdf
以下のような図解入りでわかりやすくロコモティブ症候群が紹介されています。






2011年5月22日日曜日

脂肪肝の生活指導の難しさ

脂肪肝を始めとする生活習慣病の治療において生活指導は最も重要な柱ですが、実践は難しいのが現実です。
本論文においては、生活指導がうまく行かなかった症例について検討されていますが、30~50代の働き盛りで多いこと(図)、うまくいかなかった理由として、仕事が忙しくて定期受診ができなかった(46%)、自分の病気について十分理解していなかった(23%)、プログラムに興味なかった(7%)、家族の介護(5%)が挙げられています (J Gastroenterology 44: 1203, 2009より引用)



日常の外来で感じていることがそのままデータになった印象を受けました。
この問題点を解決していかない限り、有効なメタボ対策を実施するのは難しいと感じますが、最近のIT技術の進歩を見ているとこれらの問題を解決する可能性をもった技術も出現しているように思います。
特にスマートフォンは、本論文でドロップアウトした働き盛りの世代が多数所有しており、将来有望と思われます。

2011年5月19日木曜日

動脈硬化の危険因子はLDLコレステロールのみか? R3iの取り組み

わが国では、死亡原因の第2位が心筋梗塞、狭心症などの心疾患、第3位が脳梗塞、脳出血などの脳血管疾患であり、両者を合計すると日本人の約3割が心血管疾患で死亡しています。
これらの心血管疾患に関係しているのが動脈硬化で、その発症・進展にLDLコレステロールが大きく関わっていると考えられ、現在ではスタチンを中心とする脂質低下療法が広く行われるようになり、それにより動脈硬化性疾患の発症リスクが減少することが数々の大規模スタディが証明しています。

しかしながら、近年登場した強力なスチタンでLDLコレステロール値を下げても、動脈硬化性疾患を確実に抑止できていません。
例えば、海外でアトルバスタチン80mg/日という高用量(国内では重症の家族性高コレステロール血症に対する最大用量が40mg/日)を用いて行われたスタディでは、同薬を10mg/日 用いた場合に比べて心血管イベント発生が6年間で10.7%が8.7%に減少して、相対リスクが22%減少していますが、大幅に抑止することに成功していません(N Engl J Med 352: 1425-1435, 2005)
この成績は動脈硬化性疾患を確実に抑えるには、LDLコレステロール値の管理だけでは不十分で、なんらかの「残された危険因子」があることを示しています。

その答えを探るために2008年に「R3i(Residual Risk Reduction Initiative)」という世界的な取り組みがスタートしました。これは世界40ヵ国で指導的な立場にある心疾患や内分泌領域の専門家が参加し、心血管疾患と細小血管障害について国際的な調査を進めるプログラムです。
www.r3i.org
高LDLコレステロール血症以外の危険因子としては現在、高トリグリセライド血症(とくに食後高トリグリセライド血症)、低HDLコレステロール血症、small dense LDLなどが知られており、これらへのアプローチもR3iプログラムの研究課題になっています。
これからの研究成果に期待したいと思います。

2011年5月13日金曜日

EOB取り込みが亢進した中分化型肝細胞癌

EOB取り込みが亢進した中分化型肝細胞癌 (肝胆膵画像 13: 220-222, 2011)

中分化型肝細胞癌では、EOBを肝細胞に取り込むことができず、肝細胞相でdefectになりますが、EOBを取り込む肝細胞癌あることが報告されています。
このような肝細胞癌では、OATP1B3やMRP2といったトランスポーターの発現が亢進している報告があります。
文献 1) J Gastroenterol 44: 793-798, 2009  2) Radiology 255: 824-833, 2010

EOBによる造影MRIで造影早期で濃染し、肝細胞相でEOBの取り込みが見られる肝腫瘍としては、EOB取り込みが亢進した中分化型肝細胞癌の他にfocal nodular hyperplasia (FNH)が考えられます。この二つの結節の鑑別は、sonazoidによる造影エコーのKupffer imageが有用と考えます。肝細胞癌ではdefectに、FNHではsonazoidの取り込みが認められる点が鑑別点になると思われます。

2011年5月11日水曜日

日本の中学生における脂肪肝

日本の中学生における脂肪肝 J Gastroenterology 45:656-665, 2010

2004年と2007年に長野県の中学生を対象にした調査で、約4%の生徒が脂肪肝であることが判明しました。
各種習慣と脂肪肝の関連は以下の表の通りで、問題になる生活習慣が明らかになりました。
この結果を見ると、中学生から正しい生活習慣を身に付けることが重要であることが再認識されます。

2011年5月9日月曜日

脂肪分を摂っていなくても体脂肪が増えることが・・・

健診で高脂血症を指摘されて受診される患者さんの多くが「私は油分は控えているのに、どうして脂肪が多いのか分からない」と話されます。
この体脂肪の大本は「糖質(炭水化物)」の摂り過ぎなのです。
炭水化物は本来は筋肉を動かすためのエネルギーでクルマにたとえるとガソリンです。
クルマの場合はガソリンタンクが一定で、ガソリンを無尽蔵に蓄えることはできませんが、人の場合は脂肪組織の中で糖質が脂肪に変わって無尽蔵に貯まっていきます。
これが脂肪組織です。
日本人は摂取エネルギーの6割を糖質(炭水化物)で摂っていますから、1600kcalを摂取している人は約1000kcalが糖質です。
これを運動で消費しようとすると大変なことがよく分かります。
痩せようと思ったら、糖質(炭水化物)の制限が重要です。
そして、運動を行ってカロリーの少量を少しでも多くすることも重要です。

2011年1月7日金曜日

NHKためしてガッテン「決定版!こんな簡単にやせちゃいましたダイエットSP」(2011.1.5)

1月5日放送のNHKためしてガッテン「決定版!こんな簡単にやせちゃいましたダイエットSP」で、ダイエットに関する興味深い事実がいくつか紹介されていました。

部分やせに成功するワザ
脂肪には、 1肝臓脂肪(第3の脂肪)、2内臓脂肪、3皮下脂肪の3種類があり、運動によってこの順番で減っていきます。
皮下脂肪が一番取れにくいので、皮下脂肪の多い太ももや二の腕はなかなか細くなりません。


効率よく痩せるワザ(運動は食前がいいのか食後がいいのか?)
食前が良い。
これは、運動をすることによって血糖が出て脳が満たされていくために空腹感が和らぎ運動後の食事量が減る効果があること、食後では食事で摂取した糖が利用されるのに対し、食前では脂肪が利用されることが紹介されていました。

膝の痛みを解消しながら痩せるワザ
以前から、同番組で10~20cmの台を上り下りするスローステップ運動が推奨されていましたが、膝が痛い人はステップ台の両側に椅子を置いて椅子の背もたれを手すり代わりに使うと膝の負担が軽くなること、消費カロリーは上半身の筋肉を使うために手すりを使わない場合と変わらないことが紹介されていました。